反訴とは何か? 訴えられたらやるべきこととは
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裁判所の司法統計によると、令和2年に大阪地方裁判所に提起された通常訴訟の件数は1万4528件でした。大阪高裁管内(大阪、京都、神戸、奈良、大津、和歌山)での通常訴訟の件数が2万6010件であったことからすると、約半数以上の事件が大阪地方裁判所に係属していることがわかります。
裁判所から訴状が届いた方は、何らかのトラブルが原因で原告から訴えられたことになります。裁判では、原告の請求内容をめぐって、原告と被告が主張反論を繰り返していくことになりますが、実は、被告とされている方からも「反訴」という形で原告を訴えることができます。
反訴という方法をとることによって、同一手続内で一度に解決することができるなどのメリットもありますので、状況に応じて使い分けていくことが大切です。今回は、反訴のメリット・デメリットや反訴の方法について、ベリーベスト法律事務所豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。
1、民事訴訟の流れ
民事訴訟において、訴える側を「原告」、訴えられる側を「被告」といいます。
反訴についての説明をする前に、まずは、民事訴訟についての一般的な流れについて確認していきましょう。
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(1)原告による訴えの提起
民事裁判は、原告が裁判所に訴状を提出することによって始まります。原告が提出した訴状に不備がなければ、第1回口頭弁論期日が指定され、被告に訴状が送達されます。
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(2)被告による答弁書の提出
訴状の送達を受けた被告は、第1回口頭弁論期日までに、訴状記載の事実関係の認否や反論などを記載した答弁書を裁判所に提出します。
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(3)第1回口頭弁論期日
裁判所に指定された期日に原告および被告が出頭して第1回口頭弁論期日を行います。期日では、原告による訴状の陳述、被告による答弁書の陳述が行われます。
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(4)2回目以降の期日
第1回口頭弁論期日で紛争が解決することはほとんどありませんので、2回目以降の期日が指定されます。2回目以降の期日も原告および被告から主張反論が繰り返されて、争点を明らかにしていきます。
裁判の期日は、約1か月に1回のペースで開かれますので、複雑な事案については解決まで1年以上の期間を要することもあります。 -
(5)和解
何回か期日を重ねて争点の整理ができてきた段階で裁判所から和解が打診されることがあります。裁判所が提示した和解案に双方の当事者が応じた場合には、その時点で訴訟は終結となります。
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(6)判決
和解が成立しない場合には、その後も審理が継続し、最終的に裁判官が判決によって判断を下します。判決に不服のある当事者は、2週間以内であれば控訴をすることができます。
なお、反訴をする場合には、口頭弁論終結までに行わなければならないという期間制限が設けられています。口頭弁論終結前であればいつでも反訴を提起することができますが、反訴のタイミングが遅くなると解決までの期間が延びてしまうおそれもありますので、出来る限り早めに反訴を提起することをおすすめします。
2、反訴とは?
反訴とはどのような手続きなのでしょうか。以下では、反訴の概要と反訴のメリット・デメリットについて説明します。
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(1)反訴とは
反訴とは、原告が提起した訴訟手続きの中で、被告が原告を訴え返すことをいいます。反訴をした場合には、原告が訴えた裁判のことを「本訴」といい、被告が訴えた裁判のことを「反訴」といいます。なお、原告と被告の名称が混同することがないようにするために、本訴の当事者を原告・被告と呼び、反訴の当事者のことを反訴原告・反訴被告と呼びます。
反訴をすることによって、本訴と同一の手続き内で審理することが可能です。 -
(2)反訴ができる条件
反訴をするためには、民事訴訟法が定める以下の条件を満たす必要があります。
① 本訴と関連性があること
本訴と反訴は、同一の訴訟手続き内で審理されることになりますので、反訴が本訴と関連性があるものであることが必要となります。たとえば、夫が妻に対して離婚の訴えを提起した場合において、妻が離婚と慰謝料の請求を求めて反訴するようなケースが考えられます。
② 口頭弁論終結前であること
反訴をする場合には、本訴の口頭弁論が終結する前に反訴を提起する必要があります。口頭弁論終結前とは、事実審である控訴審での審理が終了するまでの間をいいます。なお、控訴審での反訴の場合は、原則として相手の同意が必要になります。
③ 審理を著しく遅滞させないこと
口頭弁論終結前の反訴提起であったとしても、著しく訴訟手続きを遅滞させることになる場合には、反訴の提起は認められません。たとえば、口頭弁論終結直前での反訴の場合、終わりつつある審理が大幅に延長されてしまう可能性があります。そのため、反訴の提起を考えている場合には、出来る限り早めに反訴提起を行うことが大切です。
④ 本訴と同じ裁判所であること
本訴と反訴は、同一の訴訟手続き内で審理されます。そのため、反訴は、本訴と同じ裁判所で審理できる場合でなければ、提起することはできません。 -
(3)反訴のメリット
反訴には、メリットとデメリットがあります。まずは、メリットを確認しましょう。
① 被告も原告に「請求」をすることができる
反訴のメリットの1つ目としては、被告も原告に「請求」をすることができるという点が挙げられます。
本訴内において被告は、自分に有利な事実があれば主張をすることが可能です。しかし、本訴はあくまで、原告の請求を認めるかどうかを裁判所が審理するものであるため、本訴内では被告が原告に対して請求をすることはできません。
たとえば、原告が被告に100万円の請求を本訴でした場合を考えてみましょう。
被告が原告に対して200万円の債権を有しているときには、対等額で相殺をすることができます。それによって原告の請求は棄却されることになりますが、被告が残りの100万円の返還を求めるためには、反訴または別訴を提起しなければなりません。
② 負担を軽減することができる
反訴のメリットの2つ目としては、同一の訴訟手続き内で審理されるため負担を軽減することができるという点が挙げられます。別訴として別々の裁判所に訴訟提起がなされた場合には、それぞれの裁判に出頭をする必要がありますので、内容が共通しているにもかかわらず2倍の負担になってしまいます。反訴を利用することによって、関連する問題を一度に解決することが可能です。
③ 訴訟費用を安くできる
反訴のメリットの3つ目としては、手数料が安くなる点が挙げられます。
反訴の場合、本訴とその目的を同じくするものであるときは、反訴の訴訟物の価額について算出された手数料額から本訴の手数料額を控除した残額で足ります。
たとえば、原告が100万円の債務の不存在確認を求める訴えを提起したのに対し、被告が元本債権は原告主張の100万円ではなく200万円であるとしてその支払を求める反訴を提起するときは、反訴状に必要になる印紙の額は、200万円を訴額とした場合における印紙額と、100万円を訴額として算出した場合における印紙額との差額になります。 -
(4)反訴のデメリット
次に、反訴のデメリットを確認していきます。
反訴をする場合には、単に口頭で「反訴をします」といっても受け付けてもらえず、訴訟提起と同様の厳格な手続きにより行わなければなりません。そのため、反訴をするためには手続き上の負担が生じるという点がデメリットとして挙げられます。
また、反訴をする場合には、裁判所に印紙代と郵便切手を納める必要がありますので、費用負担が生じるという点もデメリットといえるでしょう。
3、反訴のやり方
反訴をする場合には、以下の方法で反訴の提起を行います。
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(1)反訴状の作成
反訴も本訴と同様に訴えの提起にあたりますので、反訴をするためには、反訴状を作成する必要があります。原告が作成する訴状と同様に、請求の趣旨、請求の原因などを記載していく必要があります。
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(2)反訴状の提出
反訴状の作成ができたら、それを本訴が係属している裁判所に提出します。反訴を提起する場合には、本訴と同様に請求金額に応じた収入印紙と郵便切手を納めなくてはなりません。
収入印紙の金額については、裁判所のウェブサイトから確認することができますが、郵便切手の金額と組み合わせについては裁判所によって異なりますので、直接裁判所に確認をするとよいでしょう。
なお、反訴の提起を弁護士に依頼をする場合には、弁護士費用(着手金、報酬金など)もかかります。 -
(3)本訴と反訴の併合審理
反訴が提起された場合には、本訴と反訴が併合され同一手続き内で審理されることになります。本訴で主張した内容や提出した証拠は反訴でも考慮されることになりますので、二度手間を避けることができます。
4、訴えられたら準備するべきこととは
ここまでは反訴についての説明をしてきましたが、裁判の準備は反訴だけではありません。そもそも、裁判の被告になった方は、以下のような準備が必要になります。
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(1)答弁書・準備書面の作成
原告から訴えられた本訴について、被告側の反論がある場合には、「答弁書」という書面を作成して裁判所に提出しなければなりません。答弁書の提出をせず、期日にも出席しない場合には、原告の主張をすべて認めたものとみなされて、被告欠席のまま判決が言い渡されることがあるため、注意が必要です。
また、2回目以降の期日では、主張や反論がある場合には、「準備書面」という書面を作成する必要があります。裁判では、口頭で自分の主張を言い合うのではなく、書面を作成してそこに主張内容を記載しなければなりません。 -
(2)証拠の収集、提出
裁判では、事実の認定は証拠によって行うことになりますので、単に主張や反論をしただけでは裁判官に有利な認定をしてもらうことはできません。そのため、自分に有利な主張を裏付ける証拠がある場合には、それを裁判所に提出しなければなりません。
原告から訴えられた場合には、自分に有利となる証拠を収集し、適切なタイミングで裁判所に提出していくようにしましょう。 -
(3)弁護士への相談
ほとんどの方が裁判を経験するのが初めての経験になりますので、突然裁判所から訴状が届いてもどのように対応すればよいかわからずパニックになってしまうでしょう。裁判では、適切に主張・立証をしていかなければ、勝てる裁判でも負けてしまうリスクがありますので、自分だけで進めていくのではなく専門家である弁護士のアドバイスを受けながら進めていく必要があります。
そのため、原告からの訴状が届いた方は、お早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
5、まとめ
原告から訴えられた被告も反訴という手続きによって原告を訴えることができます。しかし、反訴をするためには、訴訟提起と同様に反訴状の作成が必要になりますし、本訴への対応も必要になってきますので、不慣れな方では対応が難しい部分もあります。そのため、被告になってしまった場合には、弁護士に相談をした方が安心といえるでしょう。
裁判所から訴状が届いたという方は、まずは、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでご相談ください。
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