メールでのお問い合わせ
メニュー メニュー

犬の放し飼いは法律で規制されていないのか? ノーリード問題

2022年02月28日
  • 個人のトラブル
  • 放し飼い
  • 法律
犬の放し飼いは法律で規制されていないのか? ノーリード問題

大阪府が公表している犬に関する統計資料によると、令和2年の大阪府内における犬の登録頭数は、13万877頭でした。令和2年の統計には、大阪市、堺市、高槻市、豊中市、東大阪市、枚方市、八尾市、寝屋川市、吹田市が含まれていませんので、それを考えるとさらに多くの犬が大阪府内で飼われているものと考えられます。

犬を飼う方が増えてくると犬の飼育マナーが問題になることがあります。特に、犬にリードを付けずに飼育している、いわゆる「ノーリード」の状態であった場合には、突然子どもに飛びかかってくる危険もあります。近隣に住む方としては、ご自身やご家族に対して危害が及ばないようにするために、何か対策を講じることはできないかと考えている方もいるでしょう。

今回は、犬の放し飼いに対する法律上の規制や危害を加えられた場合の飼い主の責任について、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。

1、犬の放し飼いは法律で規制されているのか

犬の放し飼いを規制する法律としては、「動物の愛護及び管理に関する法律」(いわゆる「動物愛護法」)があります。動物愛護法では、犬の放し飼いについてどのように規制しているのでしょうか。

  1. (1)動物愛護法とは

    動物愛護法とは、動物愛護に関する基本的な事項を定めて法律です。動物愛護法は、動物の虐待や遺棄の防止、動物の適正な取り扱い、動物の健康および安全の保持という動物の愛護のための定めを置くとともに、動物による人の生命、身体および財産に対する侵害、生活環境の保全上の支障を防止するための動物の管理に関する定めを置いています。

    このように、動物愛護法は、動物の愛護および動物の管理を通じて、人と動物が共生する社会の実現を図ることを目的とした法律だといえます。

  2. (2)動物愛護法での放し飼いの規制

    動物愛護法では、動物の所有者または占有者に対して、「動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」と規定し(動物愛護法7条1項)、当該動物の保管方法の基準について環境大臣に制定を委ねています。これを受けて、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」で、犬の放し飼いについての規制をしています。

    同基準では、さく等で囲まれた自己の所有地、屋内その他の人の生命、身体および財産に危害を加え、人に迷惑を及ぼすことのない場所において犬を飼養および保管する場合を除いて、犬の放し飼いは禁止されています。

    また、犬をリードでつなぐ場合には、犬の行動範囲が道路または通路に接しないようにしなければなりません。さらに、犬を散歩させる場合にも原則としてリードをつながなければなりません。

    ただし、動物愛護法に基づく上記の法規制は、あくまでも動物の所有者および占有者の努力義務とされています。そのため、動物愛護法に定める保管方法でなかったとしても罰則などの適用はありません。

2、大阪府の条例での規制

犬の放し飼いについては、動物愛護法だけでなく、各地方自治体の条例でも規制がなされています。以下では、犬の放し飼いを規制する大阪府の条例について紹介します。

  1. (1)大阪府動物の愛護及び管理に関する条例

    大阪府が制定している「大阪府動物の愛護及び管理に関する条例」では、犬の飼養者に対して、以下の場合を除き、人の生命、身体または財産に害を加えるおそれのない方法で、常に係留しておかなければならないとしています。

    • 飼い犬をおりに入れて飼養し、または囲い等の障壁の中で飼養するとき
    • 人の生命、身体または財産に害を加えるおそれのない場所または方法で飼い犬を訓練し、移動し、運動させるとき
    • 警察犬、狩猟犬、身体障害者補助犬法2条1項に規定する身体障害者補助犬をその目的のために使用するとき
    • 展覧会、品評会、競技会、興行等のため飼い犬を使用するとき
  2. (2)条例違反の罰則

    上記の大阪府動物の愛護及び管理に関する条例に反して、除外事由がないにもかかわらず、放し飼いで犬の飼養を行った場合には、罰則として拘留または科料に処せられます

    拘留とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設で身体拘束を受ける自由刑のことです。科料とは、1000円以上1万円未満の金銭納付を命じられる財産刑のことをいいます。いずれも刑罰ですので、拘留または科料に処せられた場合には、前科になります。

    大阪府の条例を前提とすると、さくなどで囲まれていない庭で犬を放し飼いにすることやノーリードで散歩をする行為については、条例違反ということになります。

3、犬が他人に危害を加えたら

犬が他人に危害を加えた場合には、飼い主はどのような責任を負うのでしょうか。

  1. (1)民事上の責任

    犬の飼い主は、動物の占有者として、飼い犬が他人に危害を加えた場合に、その被害者に生じた損害を賠償する責任を負うことになります(民法718条1項)。ただし、飼い主がペットの種類および性質に従って、相当の注意を払ってペットの管理をしていたと認められる場合には、飼い主の責任は免除されます。

    ここでいう相当の注意とは、通常払うべき程度の注意義務のことを意味しており、異常な事態に対処しなければならないというまでの注意義務は要求されません。相当の注意を払っていたかどうかについては、犬の種類(大型犬か小型犬かなど)、性質(人を襲う癖があるかなど)、保管状況などによって判断されることになりますが、放し飼いの犬が人を襲ったような場合やノーリードでの散歩中に咬みついたという場合には、原則として、飼い主の責任は免れないでしょう。

  2. (2)刑事上の責任

    犬が他人に危害を加えた場合には、犬の飼い主は、以下のような刑事上の責任を問われる可能性があります。

    ① 過失致傷罪
    飼い主は、ペットを飼育するにあたって、他人の身体や財産に危害を加えてはならないという社会通念上の注意義務を負っています。このような注意義務に反して、飼育するペットが第三者を咬むなどして怪我をさせてしまった場合には、過失致傷罪(刑法209条)に問われる可能性があります。

    飼い主の過失の程度が著しい場合には、より重い罪である重過失致死傷罪(刑法211条)に問われる可能性もあります。さらに、ペットショップなど動物取扱業者などに対しては、業務上過失死傷罪(刑法221条)が適用される可能性もあります。

    人を怪我させてしまったのであるから傷害罪ではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、傷害罪は、故意犯ですので、飼い犬を使って故意に他人を怪我させようとする意思がなければ、傷害罪は成立しません。

    ② 器物損壊罪
    飼い犬が人ではなく他人の所有するペットを傷つけてしまった場合には、どうなるのでしょうか。

    この場合には、器物損壊罪(刑法261条)の成否が問題になりますが、器物損壊罪は、故意犯ですので、うっかりリードを放してしまったという過失の成否が問題になるケースでは、器物損壊罪は成立しません。

    他方、他人のペットを傷つける故意があった場合には、器物損壊罪が成立し、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます。ただし、器物損壊罪は、被害者からの告訴が必要な親告罪とされていますので、告訴がなければ刑事裁判が行われることはありません。

4、重大な被害が生じていたら

飼い犬の行動によって生命、身体、財産に被害が生じた場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)飼い主に対する損害賠償請求が可能

    飼い主の不注意によって、飼い犬が第三者に咬みつくなどして損害を与えた場合には、その被害者は、飼い主に対して損害賠償請求をすることができます。飼い主が賠償しなければならない損害は、飼い犬の行為と相当因果関係のある損害であり、以下のものが挙げられます。

    ① 治療費
    治療費とは、当該怪我の治療のために必要と認められる入院費及び通院費などの実費をいいます。

    ② 入院付添費
    治療にあたって被害者に付き添い看護が必要になると認めらえる場合には、入院付添費が損害として認められます。

    ③ 通院交通費
    車や公共交通機関を使用して、通院をした場合には、その費用が損害として認められます。

    ④ 慰謝料
    慰謝料は、受傷の程度、入通院の期間、後遺症の内容、性別、年齢などを考慮して決定されます。

    ⑤ 休業損害
    被害者が怪我の治療のために仕事を休まざるを得なくなった場合には、減収分の損害も請求することができます。

    ⑥ 逸失利益
    後遺症を負ったことによって、事故前と同様に労働を行うことができなくなった場合には、後遺症の程度に応じて逸失利益を請求することができます。
  2. (2)加害者との交渉や裁判は弁護士にお任せください

    飼い犬に咬まれるなどの被害に遭った場合には、その飼い主に対して、損害賠償請求をすることになります。損害賠償請求の方法としては、まずは、飼い主と話し合いをする必要がありますが、交渉に不慣れな被害者の方では、どのように進めていいかわからず、大きなストレスを抱えることもあります。

    弁護士は、交渉の専門家ですので、飼い主に対する損害賠償請求をご検討中の方は、弁護士にお任せください。被害状況などから飼い主の法的責任を立証し、被害者の方が受けた損害を回復できるように全力でサポートいたします。話し合いで解決できない場合には、裁判を起こすことになりますが、裁判手続きについても弁護士が行いますのでご安心ください。

5、まとめ

自宅の庭や公園などで犬を放し飼いで飼育・散歩している飼い主の方を見かけることがあります。動物愛護法では、努力義務とされており罰則規定はありませんが、各地方自治体の条例で、放し飼いについては罰則付きの規制がなされていることが多いです。

近所の飼い犬などによって何らかの被害を受けたという場合には、弁護士が被害回復のお手伝いをいたします。その際には、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

豊中千里中央オフィスの主なご相談エリア

豊中市石橋麻田町、稲津町、今在家町、大島町、岡上の町、岡町、岡町北、岡町南、春日町、神州町、北条町、熊野町、栗ケ丘町、桜の町、三和町、柴原町、島江町、庄内幸町、庄内栄町、庄内宝町、庄内西町、庄内東町、庄本町、城山町、新千里北町、新千里西町、新千里東町、新千里南町、末広町、千成町、曽根西町、曽根東町、曽根南町、立花町、玉井町、大黒町、刀根山元町、野田町、服部寿町、服部西町、服部本町、服部南町、服部元町、服部豊町、原田西町、原田元町、東寺内町、東豊中町、日出町、広田町、二葉町、宝山町、豊南町西、豊南町東、豊南町南、蛍池北町、蛍池中町、蛍池西町、蛍池東町、蛍池南町、本町、待兼山町、宮山町、山ノ上町、若竹町、箕面市粟生外院、粟生新家、石丸、稲、今宮、小野原西、小野原東、萱野、外院、船場西、船場東、西宿、白島、坊島、吹田市青山台、上山田、千里万博公園、高野台、竹見台、津雲台、藤白台、古江台、山田丘、山田北、山田西、山田東、池田市、茨木市、豊能町、能勢町にお住まいの方

ページ
トップへ