会社への離婚報告は必須? 報告内容やタイミングについて解説

2024年08月29日
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会社への離婚報告は必須? 報告内容やタイミングについて解説

令和5年の大阪府豊中市の婚姻件数は1632件で、離婚件数は602件でした。

離婚の際、わざわざ会社に報告をすべきか迷う方もいるのではないでしょうか。しかし、社内の事務手続きのため、少なくとも人事と上長には報告する必要があります。詳しく伝える必要はなく、離婚の事実を端的に報告すれば足りるでしょう。

本記事では、離婚を会社の人に報告すべきかどうか、および会社員の離婚に関するその他の注意点などをベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和5年豊中市統計書」(豊中市)


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1、離婚したら、会社の人に報告した方がよい

会社員の方が離婚をしたら、その事実を会社の人に伝えた方がよいです。最小限の範囲の人に、必要な事項に絞って伝えれば足ります。

離婚について話すのは恥ずかしい、ためらわれると感じているかもしれませんが、職場における人間関係や事務手続きなどを円滑化するため、早めに離婚の報告をしておきましょう。

  1. (1)離婚を会社の人に報告すべき理由

    離婚したことを会社の人に報告すべき理由としては、主に以下の各点が挙げられます。

    ① 事務手続きとの関係で、離婚の事実を報告する必要があるため
    以下のような場合には、事務的な変更手続きとの関係上、会社に離婚の事実を報告する必要があります。
    • 税金や社会保険(厚生年金保険・健康保険など)との関係で、被扶養者の状況が変化する
    • 家族手当を受給している
    • 氏(名字)が変わる
    など

    ② 上司や同僚などから不信感を抱かれないようにするため
    直属の上司や親しい同僚などに対しても離婚を伝えないと、不信感を抱かれて人間関係に支障が生じるおそれがあります。密な付き合いのある人に対しては、離婚の事実を伝えた方がよいでしょう。

    ③ 働き方の変化について理解してもらうため
    離婚によってシングルマザー(シングルファーザー)になった場合などには、婚姻中に比べて時短勤務を申請する機会が増えるなど、働き方の変化が想定されます。
    働き方の変化について上司や同僚に理解してもらうためには、離婚によって生活の状況が変わることをあらかじめ伝えておきましょう。
  2. (2)離婚を報告すべき相手

    被扶養者の状況が変化する、家族手当を受給している、氏(名字)が変わるなど、事務手続き上必要となる離婚の報告は、人事担当者に対して行いましょう。報告用のフォームなどが用意されている場合は、それを利用して離婚報告をします。

    また、職場における人間関係に配慮し、働き方の変化について理解を得る観点から、直属の上司や密な付き合いをしている同僚などに対して離婚の報告をしましょう。まずは直属の上司に報告をしてから、順次他の人に報告をするのが一般的です。

  3. (3)離婚を会社の人に報告するタイミング

    離婚の報告は、離婚が成立してから速やかに行うのが一般的です。

    協議離婚の場合は離婚届の提出時、調停離婚または裁判離婚の場合は、法的手続きによる離婚の確定時に離婚が成立します。

    ただし、調停離婚または裁判離婚の場合も、離婚成立日から10日以内に離婚届を提出しなければなりません。そのため、離婚届を提出してから速やかに報告すればよいでしょう。

    離婚することが確定していない段階で報告をすると、後に離婚が取りやめになったり、予想以上に離婚手続きが長引いたりすることがあります。余計な波風を立てないようにするためにも、離婚の報告は離婚成立後に行うことをおすすめします。

  4. (4)離婚報告の際に伝えるべき事項

    会社の人に対して離婚を報告する際には、以下の事項を伝えましょう。

    ① 人事担当者に対する報告
    扶養家族に関する状況の変化や氏の変更など、事務手続き上必要な情報を伝えます。

    ② 上司や同僚に対する報告
    離婚した旨を伝えるとともに、働き方の変化が予想される場合には、その内容や一定の配慮をしてほしい旨などを伝えます。


    離婚に至るまでの経緯などは、話したくなければ詳しく伝える必要はありません。あくまでも職場における事務手続きや人間関係を円滑化するため、必要な情報に絞って伝えれば足ります。執拗に離婚理由を聞かれる場合には、パワーハラスメントに該当する可能性もありますので、社内の相談窓口や公的機関に相談するとよいでしょう。

2、会社員が離婚後に受けられる所得控除

会社員が離婚した場合、以下の所得控除を受けられることがあります。



「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の該当欄にチェックをして会社に提出すれば、年末調整の際にひとり親控除または寡婦控除を受けることができます。
下記の要件に該当する方は、会社に対して「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を再提出しましょう。

なお、父親・母親の両方にひとり親控除の適用を受けることはできませんので、どちらが控除を受けるかで争いが起きることがあります。そのため、離婚に際しては、扶養の取り決めもしておいた方がよいでしょう。

  1. (1)ひとり親控除

    ひとり親控除は、生活費を一緒にしている子ども(「生計を一にする子」という)を単身で育てている人を対象とする所得控除です。

    その年の12月31日時点において、以下の要件をすべて満たす方は、所得税に対し35万円、住民税に対し30万円のひとり親控除を受けることができます。

    (a)婚姻をしていないこと、または配偶者の生死が明らかでないこと

    (b)事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと

    (c)生計を一にする子がいること
    ※子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限ります。
    ※子と同居していない場合でも、常に生活費・学資金・療養費等の送金を行っているときは、生計を一にするものとして取り扱われます。

    (d)合計所得金額が500万円以下であること

    参考:「No.1171 ひとり親控除」(国税庁)

  2. (2)寡婦控除

    寡婦控除は、夫と離婚または死別した女性を対象とする所得控除です。

    その年の12月31日時点においてひとり親控除の要件に該当せず、かつ以下の(a)または(b)の要件に該当する方は、所得税に対し27万円、住民税に対し26万円の寡婦控除を受けることができます。

    (a)以下の要件をすべて満たすこと
    • 夫と離婚した後婚姻をしていないこと
    • 扶養親族がいること
    • 合計所得金額が500万円以下であること

    (b)以下の要件をいずれも満たすこと
    • 夫と死別した後婚姻をしていないこと、または夫の生死が明らかでないこと
    • 合計所得金額が500万円以下の人

    ※ひとり親控除と寡婦控除を重複して受けることはできません。その年の12月31日時点においてひとり親控除の要件を満たす場合は、ひとり親控除が優先されます。

    参考:「No.1170 寡婦控除」(国税庁)

  3. (3)ひとり親控除と寡婦控除の違い

    ひとり親控除は、令和2年から新設された制度です。類似した制度の寡婦控除は未婚のひとり親には適用がありませんでしたが、ひとり親控除の新設により、未婚の場合にも子どもを扶養しているケースであればひとり親控除が適用されることとなりました。

    そのため、子どもを扶養している場合には基本的にひとり親控除が適用されることとなりますが、死別・離婚で子どもでない家族を扶養している場合等には、ひとり親控除の適用外ですので寡婦控除が適用されることとなります。

3、離婚が会社での立場に与える影響は?注意点を解説

会社員の方が離婚をすると、会社における働き方を変化させざるを得ないこともあります。上司などと相談しながら、無理のない柔軟な働き方を模索しましょう。

なお、離婚を理由として解雇その他の不利益な取り扱いをすることは認められないので、ご安心ください。

  1. (1)生活の状況が変わったら、時短勤務や部署移動などの相談を

    離婚に伴い子どもの親権を得て、シングルマザー(シングルファーザー)として子どもと暮らすことになった場合は、業務の負担を軽減しなければ生活に支障が出てしまうケースが多いです。

    婚姻中と同様の働き方が難しい場合は、今後の働き方について上司に相談しましょう。時短勤務や部署移動など、無理のない働き方を提案してもらえることがあります。

  2. (2)離婚を理由とする不利益な取り扱い(解雇など)は違法

    離婚したことや、シングルマザー(シングルファーザー)になったことを理由として、会社が解雇などの不利益な取り扱いをすることは違法です。

    仕事上のミスや、社会的に非難される不適切な行為をしたわけではないので、会社が従業員を不利益に取り扱うことは認められません。

    もし離婚を理由に会社から不利益な取り扱いを受けたら、それが違法であることを指摘して反論しましょう。ご自身で反論することが難しければ、弁護士に相談することをおすすめします。

    なお、従業員ではなく会社の役員である場合は、理由を問わず株主総会決議によって解任されることがあるのでご注意ください(会社法第339条第1項)。もっとも、正当な理由なく役員を解任された場合には、会社に対し損害賠償が可能です。離婚するということのみをもって正当事由とは認められにくいでしょう。

4、離婚に関する問題は弁護士へ相談を

配偶者との離婚を検討している方は、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。

弁護士は、財産分与・年金分割・慰謝料・婚姻費用などの金銭的条件や、親権・養育費・面会交流などの子どもに関する条件について、どのように取り決めるのがよいか具体的な助言をします。

また、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟などの手続きについても、弁護士に依頼すれば一任できるので安心です。

適正な条件で離婚を成立させるためには、弁護士によるサポートが役立ちます。これから配偶者に離婚を切り出そうとしている方も、すでに離婚の話し合いを始めている方も、まずは弁護士へご相談ください

5、まとめ

会社員の方が離婚したときは、事務手続きや職場における人間関係を円滑化するため、離婚成立後速やかに会社の人へ報告しましょう。細かい経緯まで伝える必要はなく、最低限の事項を伝えれば足ります。

会社への報告の仕方を含めて、離婚手続きについて分からないことがある方は、弁護士に相談するのが安心です。

ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。スムーズかつ適切な条件で離婚を成立させるため、実績ある弁護士が親身になってサポートします。

配偶者との離婚を検討しているものの、どのように対応すればよいか分からない会社員の方は、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています