離婚の手続き期間はどれくらいかかる? 手続きごとに詳しく解説
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豊中市は市のホームページにおいて、結婚や離婚の際に必要となる手続きを一覧化したページを公開しています。また、LINEによる情報発信も行っているそうなので、調べたい事柄があるときは活用するとよいでしょう。
配偶者とこれから離婚の話し合いをしようと考えている場合、一般的に離婚が成立するまでにはどれくらいの期間がかかるのかは気になる事柄です。
この記事では、3種類の離婚の手続きと、それぞれにかかる期間、時間がかかりそうな場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。
1、基本的な離婚の手続きは主に3種類
離婚の手続きは主に3種類あります。まずは、それぞれの手続き内容について解説します。
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(1)協議離婚
民法には「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定されています(民法第763条)。これを「協議離婚」といい、夫婦が話し合いによって離婚を成立させる方法です。
協議離婚は、夫婦が話し合いを行って互いに納得して離婚することになるため、どのような理由であっても離婚することが可能です。夫婦双方に離婚意思、すなわち法律上の婚姻関係を解消する意思があり、届け出をすることによって離婚が成立します。
協議離婚において最低限必要なことは、離婚届の作成と市区町村役場への提出です。そのため、双方が離婚や離婚条件に合意できていれば、3つの離婚方法の中では、もっとも迅速に離婚できる方法だといえます。 -
(2)調停離婚
「調停離婚」とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して行う離婚手続きのことをいいます。
当事者の話し合いによる方法では離婚に至らない場合や、離婚の話し合いをしようと試みても相手方が話し合いに応じてくれない場合などに、調停手続きを申し立てることになります。
調停では、家庭裁判所の裁判官1名と民間の中から選ばれた調停委員2名以上で構成される調停委員会が、当事者の間に入って事情や意見をヒアリングします。基本は、話し合いによって解決を図る手続きで、調停委員会は双方が合意できるように助言やあっせんを行います。
調停手続きにおいて当事者が離婚の合意に達した場合には、その合意は調停調書に記載され判決と同一の効力があります。なお、調停離婚では、調停で離婚が成立した日が離婚日です。
また、離婚調停が成立した場合には、申立人は戸籍法に基づき届け出をする必要があります。調停が成立してから10日以内に、市区町村役場に離婚届を提出しなければなりません。この際、協議離婚の際の離婚届と異なり、相手方の署名・捺印や証人の記載については不要となります。
調停離婚では、離婚そのものだけではなく、未成年の子どもの親権者や養育費、財産分与、年金分割、慰謝料などについても離婚と同時に決めたいと申し出ることが可能です。
なお、離婚調停は双方が裁判所に出席して、話し合いにより自主的な解決を図る制度のため、相手方が話し合いに応じない場合には調停手続きを進めることはできません。調停委員会は、相手方に出席するように働きかけを行うことはできますが、相手方が出席しない場合や双方が合意できない場合には、調停手続きは不成立となり終了します。 -
(3)裁判離婚
離婚について、調停手続きにおいても解決できない場合には、離婚訴訟を提起することになります。原則として、調停離婚を経ずに裁判離婚をすることはできませんが、相手が行方不明である場合など、調停をすることが不可能な場合には例外的に調停を経ずに裁判を提起することもできます。
ただし、裁判離婚の場合には離婚できる理由について厳密に定められています。
民法で定められている裁判で離婚を請求することができる原因(法定離婚事由)は、以下の5つです(民法第770条1項参照)。- ① 配偶者に不貞な行為があったとき
- ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
①〜④の離婚原因が具体的であるのに対して、⑤の離婚原因は「その他」と規定しています。そのため、①〜④の理由がなくとも、婚姻関係を継続することを期待できないほど深刻に破綻している場合や事由がある場合には、⑤にあたるとして裁判離婚を請求できる可能性があります。具体的には、長期間の別居や性格の不一致、DV・モラハラ等が⑤に該当し得る事情となります。
裁判離婚は、原告(離婚を求める側)が配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に訴状を提出します。
これに対して、被告は第1回口頭弁論期日までに答弁書を提出して認否・反論をすることになります。原告と被告が主張を尽くし、書証や尋問を終えた後に、最終的には裁判所が離婚について判断を行います。
2、離婚の手続き期間は最短で1日~長くて1年以上かかることも
3つの離婚手続きごとに、離婚成立までの期間を解説します。
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(1)協議離婚の期間
協議離婚の期間については、夫婦の話し合いにかかる時間や個別の事情によって異なります。しかし、以下のようなケースでは、短期間で離婚することも可能でしょう。
- 夫婦双方が離婚することに合意しているケース
- 子どもがいないケース
- 財産分与、親権・養育費、慰謝料などで揉めていないケース
このような場合であれば、離婚届を作成して提出するだけなので、極端な話ですが1日で離婚することも可能です。
なお、協議離婚の場合には、離婚届書に成年の証人2名の署名・押印が必要とされているため、親族や知人に協力を得なければならないという点は注意しておいてください。 -
(2)調停離婚の期間
調停離婚の手続きにかかる期間は、おおむね6か月程度です。
離婚調停の手続きは複数回の期日を経ることが一般的ですが、通常期日は裁判所が指定することになり、1か月に1回程度の頻度で指定されます。離婚調停事件は、4回前後の期日で調停が成立か不成立で終了することが多いので、半年程度の期間がかかると考えておきましょう。
ただし、親権者や養育費の問題、財産分与に関する取り決め、有責配偶者への慰謝料など話し合うべき問題が多い場合は、長期化する傾向があります。 -
(3)裁判離婚の期間
離婚裁判に要する期間は1年程度で、長期化した場合には2年を超えるケースもあります。
裁判期日については、当事者の意見を聞きながら裁判所が指定することになりますが、一般的には、1か月に1回のペースで指定されます。
訴訟を提起する場合には、主張書面や証拠をそろえて提出しなければなりません。そのため、必要な調査や証拠の収集に時間がかかる場合は、手続き段階で時間がかかることもあります。
さらに、裁判の結果に不服のある当事者は上訴することができるため、上訴された場合には離婚が確定するまでさらに時間がかかることになります。
3、離婚が長期化する理由・原因
離婚手続きが長期化しやすいのは、どのようなケースなのでしょうか。具体的に、解説します。
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(1)相手が離婚に反対している場合
本人がいくら離婚を望んでいたとしても、相手方配偶者が断固離婚を拒否する場合には、話し合いや調停で決着することは難しく、裁判に至る可能性が高くなります。
離婚を望む当事者は、法定離婚事由に該当していることを主張・立証して裁判を提起し、離婚請求を認めてもらう必要があります。相手が離婚に反対している場合には、当然真っ向から反論してくることが予想されるため、裁判の期間も長期化する傾向があります。 -
(2)夫婦両方が親権を欲しがっている場合
夫婦の間に未成年の子どもがいて、その親権を夫婦が争っているケースです。
親権は母性優先の原則として、乳幼児の子どもの親権は母親とすることが好ましいと判断される傾向があります。しかし、母親も父親も絶対に親権を獲得したいとなった場合は、話し合いが難航することが予想されます。
仮に、親権については決着できたとしても、親権を獲得できなかった側が面会交流に関して多くの要求をし、その内容が折り合わないということもあります。 -
(3)相手に一方的な離婚原因がある場合
相手に離婚に関して一方的な責任がある場合にも、離婚手続きが長期化する可能性があります。
たとえば、相手方が不貞行為やDV行為をした有責配偶者である場合です。
この場合、相手に対して不法行為に基づく慰謝料を請求することができます。しかし、そのような事実を立証するためには証拠を収集する必要があることにくわえ、相手から反論を受けることもあります。
相手が一定の有責性を認めたとしても、慰謝料などの減額交渉をしてくることもあるので、満足な補償を受けるためには慎重に検討しなければなりません。
したがって、相手方が有責配偶者であり、慰謝料等の金銭を請求する場合には、離婚成立までに時間がかかる可能性があります。
4、離婚の手続きが長期化しそうな場合にするべきこと
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(1)離婚条件の整理や別居の検討
離婚の手続きが長期化しそうな場合には、まずは離婚条件を整理し、納得できる落としどころを探すことを検討してみましょう。
すべてについてご自身の要求を通そうとするのではなく、優先順位を付けて妥協できる点においては相手方に一定の譲歩を見せることで、話し合いがスムーズになるケースもあります。
また、別居するのも一案です。物理的に距離を置くことで、冷静になって離婚について協議ができるようになることが期待できます。ただし、相手の同意なく別居をすると、同居義務違反となる可能性があるため注意が必要です(民法752条)。
なお、別居をしたものの離婚に至らず、別居期間が数年に及んだ場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして法定離婚事由が認められることもあります。 -
(2)弁護士に相談する
弁護士というと、裁判になった場合に依頼する、というイメージがあるかもしれませんが、話し合いの時点から介入することができます。
弁護士であれば、問題となっている事項について合理的な解決案を提示・助言することができるので、協議を進められる可能性が高まります。また、代理人となれるので、相手との交渉をすべて任せることができます。直接話し合う必要がなくなることで、お互いに冷静になることもできるでしょう。
話し合いでは解決できず、調停や裁判になった場合にも、引き続き代理人として対応を一任できます。
5、まとめ
3つの離婚手続きや、離婚までの期間などについて詳しく解説してきました。
すぐに離婚したい、相手が離婚に反対していて時間がかかりそうといった理由から、本意ではない条件をのんで離婚することを選択するケースも少なくありません。しかし、焦って決断するのはおすすめできません。まずは離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをご検討ください。
ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスには、離婚事件の解決実績が豊富な弁護士が在籍しております。離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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