「離婚」という夫婦の問題に親が介入してきたら? 対処法を解説
- 離婚
- 夫婦の問題に親が介入
夫婦の問題は本来なら当事者同士で解決したほうがいいものですが、どちらかの親が介入したために余計に問題がこじれてしまう、ということはよくあります。また、とくに重大な問題である「離婚」に関しても、親が介入してしまうことがあるのです。
本コラムでは、夫婦問題に親が介入してきて困っている方に向けて、対処法や離婚方法、弁護士に相談するべき理由などを、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。
1、夫婦の問題に親が介入してくるケース
夫婦間の問題に親が介入してくる場合としては、たとえば以下のようなものがあります。
- 子どもはいつかとしつこく聞いてくる
- 子どもの名前を勝手に決めて夫婦の意見を聞かない
- 住む場所を勝手に決めて夫婦の意見を聞かない
- 妻に対して仕事をしろと言ってくる
- 子どもの進学先や就職先を勝手に決めて夫婦の意見を聞かない
- 夫婦げんかにいちいち介入してくる
- 相手の愚痴を話しただけなのに離婚しろと強く迫ってくる
- 離婚したいのに離婚するなと強く迫ってくる
本来、夫婦のことは夫婦が決めるべきですが、親が介入してくることで余計に問題が悪化してしまい解決が困難になる場合もあります。
深刻な場合には、当初は離婚を考えていなかった夫婦が、親の介入が原因で離婚するまでに至ることもあるのです。
また、離婚をすることについて夫婦間で話し合っているうちにどちらかの親が介入することで、話がこじれて離婚が成立するまでに時間がかかったり協議や調停でも離婚が成立しなくなったりする、ということもあります。
2、離婚問題に親が介入してきたときの対処法
以下では、離婚について夫婦間で話し合っている最中に親が介入してきた場合を想定したうえで、対処法を解説します。
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(1)夫婦ふたりで話し合いをしたいと告げる
まずは、「離婚は夫婦の問題であるのだから、夫婦ふたりで話し合いをしたい」ときっぱり告げるようにしましょう。
親子関係によっては「何でも親に相談して親に決めてもらう」という方もいるかもしれません。
しかし、離婚問題は他人ではなく夫婦が決めるべきことです。
相談程度にとどめたうえで、「決めることは自分が決める」ときっぱりと親に告げましょう。 -
(2)離婚の話が終わるまで連絡を絶つ
どうしても親の介入が続くときは、離婚の話が終わるまで親と連絡を絶つことも試してください。
連絡を絶つことができれば、話し合いに集中できるでしょう。 -
(3)弁護士に依頼をする
親と同居している場合や、親の介入によって混乱してしまった場合などには、第三者であり専門家でもある弁護士に相談することを検討してくだい。
弁護士が客観的な立場から関与することによって、親の介入を抑えられやすくなります。
3、夫婦間の話し合いで離婚がまとまらなかったときの離婚方法
離婚したくても夫婦間の話し合い(協議)では離婚がまとまらないときには、調停などを経たうえで、最終的には訴訟によって離婚を目指すことになります。
以下では、離婚調停と離婚訴訟の概要を解説します。
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(1)離婚調停
離婚調停とは、裁判所で夫婦が離婚について話し合う手続きです。
通常は男女二人の調停委員が夫婦から事情を聴き、必要なアドバイスをしながら進められます。
なお、離婚の可否のみならず、財産分与や年金分割、子どもがいる場合には面会交流や養育費や親権はどうするか、慰謝料が発生する場合には金額をどうするかなど、離婚条件についても話し合うことができます。
調停は、調停委員が介入するとはいえあくまでも話し合いであるため、相手が離婚に合意しなければ離婚はできません。
しかし、相手が行方不明などの場合を除いて、離婚訴訟を提起するにはまず離婚調停を経る必要があるのです。
離婚調停は、申立書と戸籍全部事項証明書を準備して、家庭裁判所に提出することにより申し立てます。
調停の日になると、夫婦それぞれが家庭裁判所に出向き、別々の待合室で呼ばれるまで待機します。
原則として、夫婦は交互に部屋に入って調停委員とそれぞれ話をするので、夫婦がお互いに顔を合わせることはありません。 -
(2)離婚訴訟
離婚調停でも夫婦が離婚に合意できなかった場合には、離婚を成立させるためには離婚訴訟を提起する必要があります。
また、協議や調停の場合にはどのような理由でも離婚することができますが、裁判で離婚が認められるためには法律で定められた事由(法定離婚事由)が必要です。
法定離婚事由は、具体的には次の5つです。- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
「不貞行為」とは、「自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」です。
また、「悪意で遺棄された」とは、「正当な理由がないのに家を出て行ったり、家から追い出したり、生活費を渡さなかったりすること」を指します。
夫婦の問題に親が介入することは、基本的に法定離婚事由にあたりません。
なお、調停と同じように、訴訟でも離婚条件について定めることができます。
4、離婚に関するトラブルを弁護士に相談するべき理由
離婚に関するトラブルは、弁護士に相談して解決したほうがよいことが多々あります。
以下では、離婚に関するトラブルを弁護士に相談するべき理由を解説します、
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(1)親の干渉を避けて夫婦の意思で解決できる可能性がある
専門家である弁護士が夫婦の離婚問題に介入することで、夫婦の親は干渉を控える可能性があります。
ただし、親が強情な場合などには「一緒に弁護士事務所に行く」と言い張って聞かないこともあるでしょう。
そのような場合にも、「親に別室で待機してもらう」などの対応をとることが可能です。 -
(2)離婚できるかどうかの見通しを立てられる
相手が離婚に応じてくれない場合、離婚するためには法定離婚事由が必要です。
弁護士に相談して具体的な事情を伝えれば、その事情が法定離婚事由にあたるかどうか、専門的な知見によって判断することができます。
たとえば、基本的には「親が夫婦の問題に介入してくる」というだけでは法定離婚事由にあたりませんが、他の事情との総合考慮で、法定離婚事由が認定される場合もあります。
とくに親の介入によって深刻な被害が出ている場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)不利な条件で離婚することを避けられる
離婚問題は、離婚するかどうかだけでなく、親権や養育費、慰謝料、財産分与、年金分割などの問題も発生することがあります。
ただでさえ離婚を検討するときは精神状態が不安定になりやすいうえに、「親権はどうなるのか」「養育費はいくらになるのか」「慰謝料は請求できるのか」などといった見通しを立てることは、弁護士でなければ困難です。
「慰謝料の支払いを受けられたのに請求しなかった」「財産分与で相手にお金を渡す必要がないのに渡してしまった」といった羽目になって後悔することを避けるためにも、離婚問題はできるだけ早く弁護士に相談したほうがいいでしょう。
5、まとめ
「子どもはいつ作るんだ」「子どもの進学先や就職先はここにすべきだ」「離婚しろ」「離婚するな」……などなど、本来は夫婦が決める問題についてどちらかの親が介入してきて、自分の意見を強く押し付けてくるという問題は、多くの家庭で起こっています。
親からの助言を参考にする程度ならいいですが、本来なら夫婦の問題とは夫婦二人で決めるべきことであり、親が積極的に介入してくることが望ましいとはいえません。
親に対して「夫婦で話し合いをしたい」とはっきりと伝えるほか、場合によっては解決するまで親との連絡を絶ったり弁護士に相談したりするといった対応をとることも検討すべきでしょう。
もし夫婦の間で話し合い(協議)を行っても離婚について合意が成立しなければ、離婚調停や離婚訴訟によって解決を図ることになります。
訴訟になった場合に備えて法定離婚事由の有無を判断しつつ、財産分与や親権や慰謝料などの離婚条件について後悔のない適切な解決を得るためにも、まずは専門家である弁護士に相談しましょう。
夫婦問題に親が介入してきて困っている方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています