リストラを理由に離婚をすることは可能なのか
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大阪府が公表している離婚件数に関する統計資料によると、令和2年の大阪府内の離婚件数は、1万4832件でした。また、当オフィスのある豊中市の離婚件数は、630件でした。
突然会社からリストラされてしまうと、それまでの安定した収入を失ってしまいますので、自分だけでなく家族にも大きな影響を与えることになります。リストラによって経済的に苦しくなってくると夫婦関係も悪化してしまい、離婚を考える方も少なくないでしょう。このような場合にリストラを理由として離婚をすることができるのでしょうか。
今回は、配偶者がリストラされたことを理由とする離婚の可否について、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。
1、リストラを理由に離婚できる?
配偶者のリストラを理由に離婚をすることができるのでしょうか。
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(1)協議離婚であればリストラを理由とする離婚が可能
離婚をする場合には、まずは夫婦の話し合いによって離婚をするかどうかおよび離婚をする場合の条件について決めていくことになります。このような話し合いでの離婚を「協議離婚」といいます。
協議離婚の場合には、基本的には夫婦の双方が合意していれば、離婚をすることができますので、離婚理由がリストラであっても、合意があれば離婚をすることができます。離婚に合意ができた場合には、離婚届に記入をして、市区町村役場に提出することによって、離婚は成立します。 -
(2)調停離婚でも合意が得られれば離婚が可能
夫婦の話し合いでは離婚の合意が得られない場合には、次の段階として、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行います。離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めてくれますので、夫婦だけで話し合いをするよりもスムーズに話し合いができ、離婚の合意が得られる可能性があります。
離婚調停は、家庭裁判所の手続きではあるものの、基本的には話し合いの手続きとなりますので、お互いが離婚に合意をしていれば離婚することができます。そのため、調停離婚であっても、リストラを理由とする離婚は可能です。 -
(3)裁判離婚ではリストラのみを理由とする離婚は難しい
協議離婚および調停離婚が成立しない場合には、最終的に家庭裁判所に離婚裁判を起こして、裁判官に離婚の可否を判断してもらうことになります。裁判官が夫婦を離婚させるかどうかを判断する際には、後述する法定離婚事由に該当するかを審理の対象とします。
配偶者がリストラをされたという事情は、法定離婚事由のいずれにも該当しませんので、裁判離婚では、配偶者がリストラをされたという理由だけで離婚を認めてもらうのは非常に難しいでしょう。
そのため、リストラのみを離婚理由とする場合には、協議離婚または調停離婚の成立を目指すことになります。
2、リストラは法定離婚事由ではない
裁判離婚が可能となる法定離婚事由にはどのようなものがあるのでしょうか。
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(1)法定離婚事由とは
法定離婚事由とは、裁判離婚をする際に必要となる離婚理由(離婚原因)のことをいい、民法では、以下の5つを法定離婚事由と定めています。
① 不貞行為
不貞行為とは、配偶者以外の異性との間で自由意思によって肉体関係を持つことをいいます。一般的に「不倫」と呼ばれている行為がこれに該当します。
② 悪意の遺棄
夫婦には、夫婦であることの基本的な義務として同居義務、協力義務、扶助義務という義務が課されています。悪意の遺棄とは、このような夫婦の基本的な義務を正当な理由なく放棄することをいいます。
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでない
配偶者の生死が3年以上明らかでないという場合も法定離婚事由となります。生死が明らかではないことが要件となりますので、生きていることは明らかだがどこにいるかわからにという場合には、法定離婚事由には該当しません。
④ 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
配偶者が精神病にかかり、回復の見込みがない場合には、夫婦の基本的な義務を果たすことが困難となりますので離婚が認められる可能性があります。
ただし、精神病にかかった配偶者が離婚によって生活ができなくなってしまう事態にならないようにするためにもその後の生活の見込みなども踏まえて、離婚の可否は慎重に判断されることになります。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
婚姻関係が破綻して回復する見込みがないという事情がある場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。たとえば、配偶者から暴力を受けている、モラハラを受けている、別居期間が長期間に及んでいるなどの事情がある場合には、この要件に該当する可能性があります。 -
(2)リストラ以外に法定離婚事由に該当する事情があれば裁判離婚も可能
リストラは、法定離婚事由のいずれにも該当しませんので、リストラという理由だけでは裁判離婚をすることはできません。しかし、リストラ以外に法定離婚事由に該当する事情があれば離婚をすることが可能です。
リストラをされると経済的にも苦しい状況となりますので、お金をめぐって夫婦で口論になることもあります。たとえば、感情的になった夫から殴られたという場合には、夫による暴力が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。また、リストラで夫婦関係が悪化して、別居をすることになった場合には、別居期間が長期間に及べば、同様にその他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。
このように、リストラをきっかけとして起こった出来事が法定離婚事由に該当すれば、離婚が認められる可能性もあります。
3、法定離婚事由「悪意の遺棄」に当たりうる事情
以下では、法定離婚事由である「悪意の遺棄」にあたり得る具体的な事情について説明します。
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(1)リストラされた後に再就職のための活動をしない
たとえば、一家の大黒柱である夫がリストラされてしまうと、夫の収入に頼って生活をしていた家族は、生活をしていくことが難しくなってしまいます。しばらくは、失業保険などによって生活費を賄うことができますが、失業保険にも期限がありますので、失業保険を受け取っている間に再就職先を探さなければなりません。
健康で働くことに問題がないにもかかわらず、働こうとしない場合には、夫婦の基本的な義務である協力扶助義務に反することになりますので、悪意の遺棄に該当する可能性があります。 -
(2)理由もなく同居を拒否する
リストラされた配偶者が、家に帰りたくないなどの理由で、外で寝泊まりするといった行為に出た場合はどうでしょうか。
夫婦には同居義務がありますので、正当な理由なく、単に家に帰りたくないという理由だけで同居を拒否する場合は、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
4、離婚を検討している場合は、弁護士へ相談を
離婚を検討していうる場合には、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)法定離婚事由に該当するかどうかを判断してもらえる
離婚を進めるにあたっては、ご自身の考えている離婚理由が法定離婚事由に該当するかどうかを把握しておくことが重要となります。なぜなら、法定離婚事由に該当しない場合には、裁判離婚をすることができないため、協議離婚か調停離婚によらなければなりません。相手の態度によってはすぐに離婚をすることができない可能性もあるからです。
リストラだけでは法定離婚事由に該当しませんが、リストラにともなって暴力や長期間の別居などの事情がある場合には、法定離婚事由に該当する可能性があります。法定離婚事由に該当するかどうかは法的判断が必要な事項となりますので、正確に判断するためにも専門家である弁護士のアドバイスが不可欠です。
今後の離婚の方針を立てるためにも、法定離婚事由に該当するかどうかが重要となりますので、まずは弁護士に相談をするようにしましょう。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
弁護士に依頼をすれば相手との交渉をすべて弁護士に任せることができるというメリットがあります。離婚の話し合いは精神的にも大きなストレスとなりますので、自分でやらなくてもよいというのは大きなメリットといえるでしょう。
また、離婚をする際には、離婚をするかどうかだけでなく、親権者、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割などの離婚条件についても定める必要があります。弁護士であれば、各離婚条件の決め方や相場を熟知していますので、相手との交渉によって最適な離婚条件を引き出すことが可能です。
離婚後の生活の不安を少しでも解消するためにも弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。
5、まとめ
配偶者がリストラされたという事情だけでは、裁判離婚をすることは難しいですが、協議離婚や調停離婚であれば離婚を成立させることができる可能性があります。また、リストラに伴って法定離婚事由に該当する事情が生じているのであれば、裁判離婚まで進めることもできるでしょう。
離婚を進めていくにあたっては弁護士のサポートが不可欠となりますので、離婚でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています