相続関係説明図は手書きでもOK? 記載内容や作成する際の注意点

2024年07月24日
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相続関係説明図は手書きでもOK? 記載内容や作成する際の注意点

ご家族が亡くなり相続が開始された際、「相続関係説明図」という書類が必要になることがあります。

相続関係説明図とは、被相続人(亡くなった方)と相続人の関係性を一覧にした、相続人の家系図のようなものです。相続手続きにあたり必ずしも作成しなければならない書類ではありませんが、相続手続きをスムーズに行う際に役立つものです。相続関係説明図は手書きで作成しても問題はありませんが、いくつか注意点があります。

この記事では、相続関係説明図の疑問点について、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。


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1、相続関係説明図とは

  1. (1)相続関係説明図とは?

    「相続関係説明図」とは、被相続人と相続人との関係が一覧になってまとまっている図のことをいいます

    被相続人を中心として、何人の相続人がいて、どのような続柄なのか、ということが一目で分かるようになっています。相続関係説明図は、一般的な家系図のようなものであるといえるでしょう。

    相続関係説明図を作成することで、相続人の数や関係などを整理することができるため、裁判所や法務局、金融機関などにおいて、相続の各種手続きをスムーズに進めることができます

    また、相続関係が複雑な場合であっても、相続関係説明図があればそれぞれの関係について簡単に説明することが可能です。

  2. (2)相続関係説明図を作成するメリット

    相続関係説明図を作成する大きなメリットは、相続人全員の関係性を一覧で把握できることですが、その他にも、法務局に提出した戸籍謄本等の原本の返却が受けられることが挙げられます

    相続において、不動産登記の名義人を変更する際には、相続人全員の戸籍謄本や被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等多数の書類が必要となります。これらの書類は原本を法務局に提出することになりますが、このとき、提出した書類の原本の返還を受けるためには、「原本と相違ない」旨を記載した原本のコピーを用意し、併せて提出する必要があります。このように、相続登記をするにあたり法務局に提出した戸籍謄本等の原本の返還を受けることを原本還付といいます。

    しかし、戸籍謄本等が多数存在する場合、その原本の写しをすべて用意することは労力を要します。そこで、戸籍謄本等の原本還付については、相続関係説明図を提出することによっても、原本のコピーを提出したときと同様に原本還付を受けることができる取り扱いとされており、この点も相続関係説明図を作成するメリットとなります。

    被相続人の名義の銀行口座がある場合、名義人が亡くなった場合には各金融機関で所定の手続きを行う必要があります。その際には戸籍謄本や除籍の原本を提出する必要があります。

    手続きごとに戸籍謄本を取得することは相続人にとって負担やコストが大きくなるため、原本の還付を受けられるのはメリットが大きいといえるでしょう。

  3. (3)「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」との違い

    相続関係説明図と似たものに、「法定相続情報一覧図」があります。法定相続情報一覧図とは、相続関係を分かりやすく一覧表にした法務局が発行する公的な文書です。

    法定相続情報一覧図は法務局の認証がありますが、相続関係説明図にはそのような認証はありません

    ただし、法定相続情報一覧図は発行までに時間がかかります。また、被相続人の氏名、死亡年月日、申出人など記載される事項が厳密に決められており、相続放棄などが発生しても記載することはできません。

    相続関係が複雑でない事案で相続登記をする場合には、弁護士の協力を得ながら相続関係説明図を作成する方が、簡易・迅速に手続きが進められる可能性があります

2、相続関係説明図は手書きでもOK|手書きする際の注意点

相続関係説明図は、作成方法自体は特に決まっていませんので、任意の方法で作成して問題ありません。

相続関係説明図は、相続人が自分で作成することも可能ですので、ワードやエクセルなどを用いてパソコンを使って作成すれば、図の修正や訂正などを簡単に行うことができるでしょう。パソコン操作が苦手という方は、相続関係説明図を手書きで作成しても問題はありません。

ただし、相続関係説明図は相続人を確定することが目的ですので、相続人が抜けていた場合や誤字・脱字がある場合には修正して再提出することになります。また、鉛筆などではなくボールペンなどあとから書き直しができないもので作成する必要があります。

最近は、相続関係説明図を作成できる便利なソフトもあるため、パソコンが使える相続人がいれば協力しあって作成することがおすすめです。

3、相続関係説明図に記載する内容

相続関係説明図を作成する際、何を記載すべきかご紹介します。ポイントさえ抑えておけば、ご自身で作成することができます。
被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本等や住民票除票、相続人全員の戸籍謄本や住民票を準備し相続人調査をしたうえで作成しましょう

  1. (1)タイトル

    冒頭の見やすい場所に「被相続人 〇〇 相続関係説明図」などと記載してください。被相続人が誰であるのかをタイトルに入れておくと分かりやすいでしょう。

  2. (2)被相続人(亡くなった方)についての情報

    被相続人に関する情報を記載します。「氏名・本籍地・最後の住所・登記上の住所・出生日・死亡日」などを記載してください。

    本籍は被相続人が死亡した時点での本籍を記載しましょう。「最後の住所」は、被相続人の死亡時の住民票の除票を取得することで記載することができます。「登記上の住所」と「最後の住所」を記載することで登記名義人が被相続人と同一人物であることを法務局の登記官が確認することができます。

  3. (3)相続人についての情報

    すべての相続人についての情報を記載する必要があります。家系図のような配置にして、各相続人の「氏名・住所・出生日・被相続人との続柄」を記載してください。

    「被相続人との続柄」として、配偶者であれば「妻」や「夫」、子どもの場合には「長男」「長女」などを記載します。子どもが養子の場合には「養子」と記載し、養子縁組の年月日(「年月日養子縁組」)を、すでに離縁している場合にはその年月日(「年月日離縁」)を記載します。

    被相続人の配偶者や子どもが相続人とならない場合には、その理由を記載してください。配偶者等が死亡している場合には、「(亡)」と記載し、離婚している場合には「年月日離婚」を記載してください。また、相続放棄をしている相続人がいる場合には「放棄」と記載します。

  4. (4)被相続人と相続人とを線でつなぐ

    被相続人や相続人といった登場人物同士の関係がどのような関係にあるかを一目で見やすいように、被相続人と相続人の関係を線でつなぎます。
    配偶者関係は二重線、配偶者以外の関係は一本線でつなぐとよいでしょう。

  5. (5)法務局職員が押印する箇所

    相続関係説明図の最後に「相続を証する書面は還付した。」と記載し、隣に別の枠を記載し登記官が押印する箇所を設けます。

4、相続関係説明図の作成は弁護士に依頼することも可能

相続関係説明図の作成は弁護士に依頼することもできます。

弁護士に相続関係説明図の作成を依頼する第一のメリットは、作成にかかる手間を省けることです。つぎに、相続人が複数いて相続関係が複雑な事案についても、記載すべき事項を漏れなく網羅して整理してもらえる点もメリットとして挙げられます。

また、連絡をとったことがない相続人に相続手続きに協力してもらうために、連絡をとらなければならない可能性もあります。相続人の調査や必要な連絡・対応についても弁護士に任せておけば一連の対応をひとつの窓口でしてもらうことができます。

さらに、相続案件の場合には、遺産をめぐり相続人同士でもめ事が発生してしまう可能性もあります。このような相続トラブルに発展してしまった場合、相続関係説明図を作成した弁護士がいれば、トラブル解決に向けてスムーズに動いてもらえるでしょう。

相手方との交渉や裁判手続きについても引き続き弁護士に対応をお願いしておけば、有利な主張や必要書類の作成・証拠の提出、裁判所への出廷など、弁護士に一任することができます。

このように、相続関係説明図の作成から相続トラブルの予防・紛争解決まで、早めに弁護士に依頼することが得策といえます。

5、まとめ

相続関係説明図の目的や概要、その作成方法などについて解説しました。相続に関係する各種手続きには期限が設けられていることがほとんどです。ご自身で対応するのが不安だという場合には、プロに相談・依頼するようにしてください。

また、相続人同士で揉めてしまって相続関係説明図等の書類の作成が進められない、今後どのように手続きを進めればいいのか分からないという方は、一度ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスにご連絡ください。

ベリーベスト法律事務所は、グループ内の税理士と連携しながら手続きを進めることが可能です。税金の問題も含めてスムーズに相続手続きを進めることができます。まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています