遺産相続の手続きを何もしてないときのリスクやデメリットは?

2024年01月30日
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遺産相続の手続きを何もしてないときのリスクやデメリットは?

令和5年4月1日時点の大阪府豊中市の人口は40万6931人で、そのうち65歳以上は10万4895人でした。

遺産相続の手続きを何もせずに放置していると、さまざまなトラブルのリスクを抱えることになってしまいます。遺産相続が始まったら、弁護士のサポートを受けて、早めに遺産相続の手続きを済ませることが大切です。

本コラムでは、遺産相続の手続きを何もしてないときのリスクやデメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。

1、遺産相続の手続きを何もしてないときのリスクやデメリット

まず、遺産相続の手続きを何もせずに放置していることで生じる可能性のある問題を解説します。
相続すべき資産や負債が全くない場合は問題ありませんが、そうでなければ計画的に相続手続きを進めることが大切です。

  1. (1)被相続人の銀行口座が凍結される

    被相続人が亡くなった事実を銀行が把握すると、被相続人の口座は凍結されます。

    預貯金のうち以下のいずれか低い金額については、相続人が単独で引き出すことができますが(民法第909条の2)、それを超える部分は遺産分割が終わるまで引き出せません。

    1. ① 預貯金額×3分の1×法定相続分
    2. ② 150万円
  2. (2)借金を相続してしまう

    被相続人が死亡時に負っていた借金は、資産と同様に相続の対象となります。

    相続放棄をすれば借金の相続を回避できますが、相続放棄の期限は原則として、相続の開始を知った時から3か月以内です。
    相続手続きをせずに放置していると、期間の経過によって相続放棄が認められなくなり、借金を相続することになってしまう点に注意が必要です。

  3. (3)相続した不動産を処分できない

    相続財産に不動産が含まれている場合には、遺産分割が完了するまでの間、不動産は相続人全員の共有となります(民法第898条)。

    共有状態の不動産を売却するためには、共有者(相続人)全員の同意が必要です(民法第251条第1項)。ただし、自分の持分のみを売却することは可能です。
    したがって、ひとりでも相続人が反対すると、不動産を売却することができなくなります。

  4. (4)相続税の無申告によるペナルティを受ける

    相続財産等の総額が基礎控除額※を超える場合は、原則として相続税の申告や納付を行う必要があります。

    ※基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数


    相続税の申告や納付を怠ると、無申告加算税または重加算税を含む高額の追徴課税を受けるおそれがあることに注意してください。

  5. (5)相続登記義務違反によって将来ペナルティを受ける

    令和6年(2024年)4月1日以降は、不動産の相続登記が義務化されます。

    義務化以降は、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、法務局で相続登記の手続きを行わなければなりません。
    また、令和6年3月31日以前に相続による不動産の所有権取得を知った場合も、令和9年(2027年)4月1日までに相続登記の手続きを行う必要があります。

    相続登記の義務を怠った場合には、将来的に「10万円以下の過料」が課されるおそれがあることに注意してください。

  6. (6)遺留分侵害額請求ができなくなる

    兄弟姉妹以外の相続人には、相続できる遺産の最低保障額である「遺留分」が認められています(民法第1042条第1項)。
    遺贈や生前贈与が行われた結果、ご自身が取得する遺産が遺留分よりも少なくなってしまった場合は、他の相続人などに対して「遺留分侵害額請求」を行えば、金銭の支払いを受けられる可能性があります(民法第1046条第1項)。

    ただし、遺留分侵害額請求の期限は、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈・贈与を知った時から一年以内です。
    この期間が過ぎると、遺留分侵害額請求権が時効による消滅してしまいます。
    相続手続きを行わずに放置していると、遺留分侵害額請求権が時効により消滅して、後で遺留分の侵害に気づいても手遅れになってしまうことに注意してください。

  7. (7)二次相続が発生して手続きが複雑になる

    被相続人の遺産の分割が完了しないまま、相続人が死亡して次の相続が発生することを「二次相続」といいます。
    二次相続が発生すると、二段階の相続手続きを同時に進めなければならなくなります。
    遺産分割に参加する相続人の数が増えるため、遺産分割協議がまとまらないリスクも高まります。

    相続手続きの複雑化を避けるため、相続手続きは二次相続が発生する前に完了することが大切です。

2、遺産相続の手続きの期限一覧

相続手続きは、スケジュールを立てて計画的に進めることが大切です。

主要な相続手続きの期限(または目安の時期)は、下記の表のとおりです。

期限・目安の時期 手続きの内容
7日以内 死亡診断書の取得
死亡届の提出
死体埋葬火葬許可証の取得
10日以内 通夜・葬儀
厚生年金または共済年金の受給権者死亡届(報告書)の提出
14日以内 国民年金の受給権者死亡届(報告書)の提出
国民健康保険証の返却
介護保険の資格喪失届の提出
世帯主変更届の提出
金融機関への連絡
自動車や公共料金などの名義変更や解約手続き
1か月以内 相続人の調査および確定
遺言書の調査や検認
相続財産の調査
3か月以内 遺産分割協議の開始
相続放棄または限定承認の申述
相続放棄または限定承認の熟慮期間伸長の申し立て
4か月以内 被相続人の所得の準確定申告
10か月以内 遺産分割協議書の作成
相続税の申告や納付
1年以内 遺留分侵害額請求の手続き
2年以内 葬祭費や埋葬費の申請
高額医療費の申請
3年以内 不動産の名義変更(相続登記)の手続き
生命保険の請求
5年以内 遺族年金の受給申請
未支給年金の受給申請

3、遺産を相続したくないときの対処法

遺産相続の手続きを進めない方のなかには、「遺産を相続したくない」という理由からわざと手続きを行わない方もおられるでしょう。
しかし、相続手続きを何もせずに放置することは、前述のようなリスクやデメリットを負うため、非常に危険です。

以下では、遺産を相続したくない方が取るべき手続きを解説します。

  1. (1)相続放棄をする

    「相続放棄」とは、遺産を一切相続しない旨の意思表示です。一部だけを放棄するなどはできません。一定の財産だけを得たい場合は、「限定承認」という手続きもあります。

    相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法第939条)。その結果、遺産の相続権を失う一方で、借金などの債務も相続せずに済みます。
    とくに借金を相続するリスクを回避する観点からは、相続放棄が有力な選択肢となります。

    相続放棄の期限は原則として、自己のために相続の開始を知った時から3か月以内です。期限後であっても相続放棄が認められることはありますが、できる限り期限に間に合うように準備と手続きを行いましょう。

  2. (2)遺産分割協議で相続分をゼロとする(財産放棄)

    遺産の相続を回避するには、遺産分割協議において相続分をゼロとすることもできます。他の相続人に対して遺産を相続しない(=相続分をゼロにしてほしい)と伝えることは、「財産放棄」と呼ばれることもあります。財産放棄は相続放棄とは違って、期限がありません。

    相続放棄とは異なり、財産放棄をした人は相続人であり続けます。
    そのため、遺産を相続しないとしても、遺産分割協議への参加は必要となります。
    また、財産放棄をしても、借金などの債務の相続を免れることはできません。
    被相続人の債権者から請求を受けたら、法定相続分に応じて債務を支払わなければならない点に注意してください。

4、煩雑な遺産相続の手続きは弁護士に相談を

遺産相続の手続きは煩雑であるため、ご自身での対応は難く感じられることもあるでしょう。
そのような場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、必要な相続手続きについて漏れなく対応することができます。
法的な検討や、書類の作成と提出なども弁護士が代行できるため、弁護士に依頼すれば負担を大幅に軽減することができます。

また、遺産分割などについて相続争いが生じてしまった場合も、弁護士はトラブルの解決を弁護士がサポートすることができます
客観的な立場にある弁護士が仲介することにより、相続トラブルが円満に解決させやすくなります
また、話し合いによる解決が難しい場合には、遺産分割調停・審判などの法的手続きについても、弁護士に代理人として対応させることが可能です。

5、まとめ

遺産相続の手続きを何もせずに放置すると、さまざまなデメリットやリスクを負うことになります。
相続手続きは、スケジュールを立てて、着実に進めることが大切です。

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。
遺産相続の手続きについて、何から手を付けてよいかわからずお悩みの方や相続放棄を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています