18歳未満が働くときの労働時間に制限はある?|雇用前に注意するべき点
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大阪府が公表している労働力調査地方集計結果によると、令和3年の大阪府の労働力人口は、476万2000人で、前年よりも3000人減少しています。
このような労働力人口の減少に伴って、高校生などの18歳未満の若者を雇用する企業も増えてきています。しかし、18歳未満の年少者については、成人と比べて心身ともに未熟な部分もありますので、年少者を保護する目的から労働基準法などによってさまざまな規制がなされています。18歳未満の年少者を雇用する企業としては、法律上の制限についてしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、18歳未満の年少者を雇用する場合の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。
1、18歳未満の労働時間
18歳未満の年少者を雇用する場合には、労働時間について特別の保護規定が存在します。
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(1)時間外労働・休日労働の制限
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。法定労働時間を超えて労働者を働かせるためには、使用者と労働者代表者との間で36協定を締結しなくてはなりません。36協定の締結によって、例外的に法定労働時間を超えた労働が可能となります。
しかし、18歳未満の年少者は、肉体的にも未熟であるため、時間外労働によって健康や成長を害するリスクが高くなります。そのため、18歳未満の年少者に対しては、36協定を締結していたとしても時間外労働を命じることはできません(労働基準法60条)。また、同様の理由から18歳未満の年少者に対して休日労働を命じることもできません。
18歳未満の年少者が、時間外労働・休日労働をすることについて同意をしていたとしても、時間外労働・休日労働に関する規制は及びます。 -
(2)深夜労働の制限
深夜労働とは、午後10時から午前5時までの労働のことをいいます。18歳以上の労働者であれば、深夜労働に対する割増賃金の支払いが必要とはなりますが、深夜労働を制限する規定はありません。
しかし、成長発達段階にある18歳未満の年少者の場合には、深夜労働は心身ともに有害であることから、原則として18歳未満の年少者に対して深夜労働をさせることはできません。ただし、以下のような場合には、例外的に18歳未満の年少者であっても深夜労働をさせることが可能です。① 16歳以上の男性を交代制で働かせる場合
16歳以上の「男性」については、交代制であれば深夜労働をさせることが認められています。交代制であれば、深夜労働による疲労の回復が可能だからです。
② 行政官庁の許可によって交代制で働かせる場合
行政官庁の許可を得た場合には、16歳以上の男性に限らず、交代制で深夜労働をさせることができます。ただし、この場合の深夜労働とは、午後10時30分までの労働とされています。
③ 災害などにより臨時の必要性がある場合
災害その他の非常事由により臨時の必要性がある場合には、行政官庁の許可を得て、18歳未満の年少者に深夜労働をさせることができます。
④ 農林水産業、保健衛生業など
農林水産業、保健衛生業、電話通信業務などについては、業務の性質上、深夜労働が必要なものになりますので、18歳未満の年少者であっても深夜労働をさせることができます。
2、年少者の保護規定
労働時間以外にも18歳未満の年少者を保護するための規定として、以下のものがあります。
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(1)年少者との労働契約
18歳未満の年少者は、未成年者になりますので、法律上制限行為能力者にあたります。制限行為能力者が法律行為をするためには、法定代理人の同意を得て行う必要があり、同意を得ずにした法律行為については、取り消すことが可能です。
雇用契約も法律行為の一種ですので、18歳未満の年少者と雇用契約を締結する際には、18歳未満の年少者の親権者である父母の同意が必要となります。ただし、労働基準法では、親権者が未成年者に代わって雇用契約を締結することを禁止していますので、雇用契約は、使用者と年少者本人との間で取り交わさなければなりません(労働基準法58条)。 -
(2)危険有害業務の制限
18歳未満の年少者は、肉体的にも精神的にも未熟であることから、年少者の健康などを守る目的で、危険有害業務に就くことが禁止または制限されています(労働基準法62条)。
なお、危険有害業務とは、以下のようなものをいいます。- 重量物の取り扱い業務
- 運転中の機械などの掃除、検査、修理の業務
- クレーン、ボイラー、2トン以上の大型トラックなどの運転または取扱業務
- 足場の組立業務
- 感電の危険性が高い業務
- 有害物または危険物を扱う業務
- 酒席に侍する業務
- 特殊の遊興的接客業(クラブ、バー、キャバレーなど)における業務
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(3)坑内労働の禁止
上記と同様に年少者の健康などを守る目的で、18歳未満の年少者に坑内労働をさせることが禁止されています(労働基準法63条)。坑内労働とは、地下の通路でトンネル工事をしたり、鉱山の発掘をしたりすることをいいます。
3、18歳未満を雇うときに注意するべき点
18歳未満の年少者を雇用する場合には、以下の点に注意が必要です。
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(1)雇用可能な年齢であるかを確認
満15歳に達した日以降の最初の3月31日を経過しない児童については、原則として、労働者として働かせることはできません。例外的に、特定の事業については、児童の健康および福祉に有害ではなく、労働が軽易である場合には、労働基準監督署長の許可を得て、修学時間外に働かせることができます。
そのため、18歳未満の人を雇用する場合には、雇用可能な年齢に達しているかどうかを確認する必要があります。その際には、本人からの口頭の説明だけでなく、身分証明書などの客観的な資料に基づいて確認をとるようにしましょう。 -
(2)親権者の同意や学校の許可を得る
18歳未満の年少者と雇用契約を締結する場合には、親権者である父母の同意が必要になります。そのため、同意があったことを明らかにするためにも雇用契約書には、未成年者だけでなく、保護者である父母の署名押印も求めるようにしましょう。
また、高校生の場合には、アルバイトをする場合に学校の許可を得ることが校則で定められていることがあります。雇用契約をする際の法律上の要件ではありませんが、雇用後に学校に無許可でのアルバイトが発覚した場合には、突然辞められてしまうなどのトラブルが生じる可能性もありますので、学校の許可が必要であるかどうか、必要である場合には学校の許可を得ているどうかを確認するようにしましょう。 -
(3)年少者の戸籍証明書を備え付ける
年少者を雇用する会社では、年齢を証明することができる戸籍証明書を事業場に備え付けることが法律上の義務とされています(労働基準法57条)。戸籍証明書とは、年少者の氏名や生年月日の記載がある住民票記載事項証明書のことをいいます。
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(4)帰郷旅費の負担
年少者を解雇する場合には、解雇された年少者が14日以内に帰郷をする場合には、使用者は帰郷のために必要な旅費を負担しなければなりません(労働基準法64条)。雇用契約締結時の注意点というわけではありませんが、年少者を雇う場合には、将来的に帰郷旅費の負担が生じることも覚えておくとよいでしょう。
4、労働者との契約は弁護士に相談を
労働者と契約をする場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)契約書のチェックが可能
労働者と雇用契約を締結する場合には、会社の定型の契約書を利用しているところも多いでしょう。しかし、働き方改革などによって、雇用形態も複雑になり、定型の契約書だけでは必要な内容が網羅されていないこともあります。
正社員、アルバイト、パート、契約社員、18歳未満の年少者など労働者のバリエーションに応じて適切な契約書となるようにするためには、専門家である弁護士にチェックしてもらう必要があります。 -
(2)雇用契約上の問題点を指摘してもらえる
18歳未満の年少者を雇用する場合には、労働基準法などで規定されている年少者の保護規定の内容を踏まえて、労働条件などを決定しなければなりません。労働基準法では、年齢区分に応じて、異なる取扱いがなされていますので、年少者を雇い入れる場合には、それらの規定を十分に把握したうえで行う必要があります。
しかし、そのために労働基準法などの関係法令の把握と理解が必要になりますが、不慣れな経営者ではどのような規制があるのか正確に理解することは難しいといえます。
年少者の保護規定に反した場合には、使用者に対して労働基準法上の罰則が適用されることになりますので、このような事態にならないようにするためにも、年少者との契約前に一度弁護士に相談をしておくのが安心です。
5、まとめ
18歳未満の年少者は、肉体的にも精神的にも未熟であるために、労働基準法などの法律によってさまざまな保護がなされています。18歳未満の年少者を雇い入れようとする企業では、このような18歳未満の年少者を保護する規定をしっかりと把握した上で、雇入れを検討することが大切です。
こらから18歳未満の年少者を雇い入れる予定であるものの、雇入れにあたって不安があるという場合には、まずはベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています