株式会社が医療法人を買収することは可能? メリットや注意点
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少子高齢化による後継者不足や、コロナ禍で受けた打撃による再建困難などを起因として、さまざまな業界で企業の売却や買収が活発化しています。
一般的な会社と同様に、医療業界においても買収・事業譲渡(M&A)は行われています。株式会社が医療法人の経営権を実質的に取得することも可能です。ただし、医療法人の非営利性との関係で、特殊なスキームを用いる必要がある点に注意しましょう。
本記事では、株式会社による医療法人の買収について、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。
1、株式会社が医療法人を買収することは可能?
医療法人は非営利であるため、株式会社が医療法人の社員になることはできません。しかし、別の方法によって医療法人を実質的に買収することは可能です。
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(1)株式会社が医療法人の社員になることはできない
医療法人の機関については、厚生労働省の通達によってルールが示されています(平成28年3月25日医政発第3号)。
参考:「医療法人の機関について」(厚生労働省)
同通達では、医療法人の社員について以下のとおり定められています。第1 医療法人の機関に関する規定等の内容について
2 社員総会に関する事項について(法第46条の3から第46条の3の6関係)
(5)その他
③社団たる医療法人の社員には、自然人だけでなく法人(営利を目的とする法人を除く。)もなることができること。
上記のとおり、営利を目的とする法人は医療法人の社員になることができません。会社は営利を目的とする法人なので、株式会社は医療法人の社員になれません。
営利法人が医療法人の社員になることができない理由としては、平成3年1月17日付け東京弁護士会会長あて厚生労働省健康政策局指導課長回答において、医療法人が開設する病院・診療所は営利を否定されている点(現行医療法第7条第7項)が挙げられています。
参考:「医療法人に対する出資又は寄附について」(厚生労働省)
同回答では、会社は出資または寄附によって医療法人に財産を提供することは可能である一方で、社員として社員総会における議決権を取得することや、役員として医療法人の経営に参画することはできないと示されています。
そのため、株式会社による医療法人の買収方法を考える際には、上記の取り扱いに留意しなければなりません。
なお、医療法人には「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」の2種類があり、現在は持分あり医療法人の新設は認められていません。持分なし医療法人に対しては「出資」ができないので、会社ができるのは「寄附」のみということになります。 -
(2)別の方法によれば、医療法人を実質的に買収できる
前述のとおり、株式会社は医療法人の社員になることができず、役員として医療法人の経営に参画することもできません。しかし、別の方法によって医療法人を実質的に買収することは可能です。
2、株式会社が医療法人を買収するメリット
株式会社が医療法人を買収するメリットとしては、主に以下の2点が挙げられます。買収に成功すれば、株式会社・医療法人の双方においてプラスの影響が期待できます。
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(1)経営の多角化
医療産業は、国民皆保険制度によって安定的な収益が期待できます。また、自由診療によって高収益が期待できる分野もあります。株式会社が営利拡大を目指すに当たって、適切な立地における医療産業は魅力的な部分が多いです。
医療産業を新規に開拓するためには多大なコストがかかりますが、既存の医療法人を買収すれば、スムーズに医療産業へと進出することができます。経営の多角化を目指して、医療法人の買収を目指す株式会社が近年増えている状況です。 -
(2)株式会社の資金力の有効利用|病院の拡大・地域医療の継続など
医療法人自体が、創業者の出資や金融機関からの融資などによって調達できる資金額には限界があります。
病院の拡大や地域医療の継続のために多額の資金を確保するためには、資金力豊かな株式会社がスポンサーとなることが有力な選択肢です。株式会社の資金力を有効に利用すれば、病院経営のさらなる発展が期待できます。
3、医療法人のM&Aは弁護士に相談を
医療法人のM&Aに当たっては、通常の会社のM&Aとは異なるスキームが用いられます。各スキームを構築する際には、医療法その他の法律の規定にも注意しなければなりません。円滑に医療法人のM&Aを成功させるには、弁護士のサポートが必要不可欠です。
弁護士は、以下のサポートを通じて医療法人のM&Aの成功を後押しいたします。
医療法人の状況に応じて、適切なM&Aスキームを選択できるようにアドバイスします。
② M&Aに関する契約書のレビュー
売主・買主間で締結するM&Aに関する契約書のレビューを行います。クライアント企業が負うリスクを適切にコントロールできるように、必要に応じて修正提案などについてもサポートします。
③ 法律上必要な手続きのサポート
医療法や会社法などに基づき、医療法人の買収について必要な手続きを漏れなくリストアップし、円滑な手続きの完了をサポートします。
④ 隣接士業との連携
税理士などの隣接士業と連携し、医療法人のM&Aに関する税務などについてもワンストップでサポート可能です。
など
弁護士のサポートを受けることにより、医療法人のM&Aの成功が近づきます。医療法人の買収を検討している会社経営者の方は、幅広い企業法務の実績があるベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。
4、まとめ
株式会社は、医療法人の社員や役員になることができません。しかし、特殊なスキームを弁護士の監督のもとで活用することにより、株式会社が実質的に医療法人を買収することはできます。
株式会社による医療法人の買収に当たっては、医療法や会社法の規定を踏まえて手続きを進めなければなりません。滞りなく買収を完了させるためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスは、医療法人の買収に関するご相談を随時受け付けております。クライアント企業の方針や医療法人の状況などに応じて、適切な買収スキームをご提案いたします。法律上必要な手続きについても漏れなくリストアップし、トラブルのない円滑な買収完了を目指してサポートいたします。
M&Aに関する経験を有する弁護士が丁寧にご対応いたしますので、医療法人の買収をご検討中の会社経営者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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