再婚禁止期間とは? 期間中に妊娠をしたらどうなる? 千里中央の弁護士が解説

2022年02月01日
  • その他
  • 再婚禁止期間
再婚禁止期間とは? 期間中に妊娠をしたらどうなる? 千里中央の弁護士が解説

令和元年の人口動態によると、令和元年の1年間に大阪府豊中市で離婚した夫婦は624組。結婚をした夫婦は1874組でした。

さて、離婚後に新たなパートナーとの結婚を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ところが、女性には離婚後の再婚には制約が設けられており、「離婚をしたらすぐに再婚ができる」というわけではありません。民法733条1項にて、女性は離婚後100日、結婚をすることができないと規定されています。

そこで今回は、離婚後の再婚禁止期間が存在する意味や離婚前に妊娠している場合の対応などについてベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。

1、再婚禁止期間が設けられている理由とは?

民法733条1項では、「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」としています。この規定から、女性は、離婚をしてから100日間は再婚をすることはできません

まずは、女性に再婚禁止期間が設けられている理由や例外について解説します。

  1. (1)再婚禁止期間が存在する理由

    再婚禁止期間は、子どもの父親を明確なものとし、子どもの福祉を守るためのものです。

    再婚禁止期間を設けずにすぐに結婚をして子どもを出産した場合、子どもの父親が前夫なのか、新しい夫なのかを確認することができません。

    母親は、自らが出産をして医療機関にて出生証明書が作成されます。そのため、子どもとの関係性が疑われることはありません。

    しかしながら、男性は実子であるかどうかをすぐに確認することができません。現在ではDNA鑑定が比較的容易になりましたが、民法が定められた当時は、医学的に父子関係を証明することは困難でした。

    このことから、民法772条2項では「嫡出推定」といいう、以下の規定を設けています。

    • 結婚後200日を経過した後に生まれた子どもは現在の夫の子どもと推定される
    • 離婚後300日以内に生まれた子どもは前の夫の子どもと推定される


    この規定により、離婚後100日に結婚をして、201日後に子どもが生まれた場合は、離婚後300日かつ再婚後200日以降に子どもが生まれていますので、再婚相手との子どもと推定されるのです。

    もし、再婚禁止期間がなく離婚後すぐに再婚をして、離婚後201日で子どもが生まれた場合、結婚後200日以後かつ離婚後300日以内となってしまい、どちらが子どもの父親か、推定が及ばなくなります。この重複を回避するために、「100日間の再婚禁止期間」が規定されているのです。

  2. (2)再婚禁止期間が適用されない場合

    再婚禁止期間の規定は、以下の場合は適用されません

    ● 離婚時に妊娠をしていなかった
    離婚時に妊娠をしていないことを医師が証明する書類を、再婚時に提出をすれば再婚禁止期間である100日以内に再婚が可能です。

    ● 離婚後に出産をした
    離婚後、100日以内に子どもを出産していれば、次に生まれる子どもは明らかに新しい夫の子どもですので、100日を経過していなくても再婚をすることができます。

    ● 元夫が3年以上行方不明の場合
    元夫が3年以上行方不明で離婚が認められた場合も、離婚後100日以内に再婚をすることができると考えられています。3年以上行方不明であれば、行方不明の夫が子どもの父親である可能性はないからです。

    ● 元夫と再婚をする場合
    離婚後の再婚相手が、元夫である場合は子どもの父親についての問題がクリアされるため、離婚後100日以内であっても再婚が可能です。

2、再婚禁止期間に妊娠がわかったらどうすれば?

次に再婚禁止期間に妊娠が判明した場合の対処法を解説します。

  1. (1)再婚禁止期間の妊娠は、妊娠した時期が重要

    先述したように、離婚から300日以内に生まれた子どもは元夫の子どもと推定されてしまいます。したがって、再婚禁止期間に妊娠が発覚して離婚から300日以内に出産した場合、生まれた子どもは元夫の子どもとして推定されます

    ただし、離婚後40日目以降に妊娠をした場合は、離婚から300日以降の出産となる可能性が高いため、元夫の子どもと推定されることはないと考えられます。

    とはいえ、早産等で出産時期が早まるリスクもありますので、「離婚後40日目以降の妊娠であれば問題ない」とは断言できません。

  2. (2)離婚後時間を空けずに妊娠をした場合の対処法

    離婚後、すぐに新しいパートナーとの子どもを妊娠した場合、離婚後300日以内に子どもが生まれる可能性があります。その場合は、生まれた子どもは元夫の子どもと推定されてしまいますので、以下のいずれかの手続きを行うことで新しいパートナーの子どもとして出生届を受理してもらうことができます。

    ● 懐胎時期に関する証明書を添付して出生届を提出する
    懐胎時期に関する証明書とは、医師が記載をする書類で推定排卵日等を記載するものです。推定排卵日が、離婚日よりも後であれば子どもは新しいパートナーの子どもとみなされます。
    懐胎時期に関する証明書があれば、家庭裁判所での手続きは必要ありません。

    ● 出生届を提出後に嫡出否認の手続きを行う
    懐胎時期に関する証明書の提出が難しい場合や、推定排卵日が離婚前である場合等は、出生届を提出してから「嫡出否認」という手続きを行う必要があります。嫡出否認については次項で詳しく説明いたします。

3、嫡出否認の手続きの概要と流れ

嫡出否認手続きは、「元夫」が行う手続きです。前述のとおり、離婚後300日以内に子どもが生まれた場合、原則として元夫の子どもであるとみなされてしまいますが、実際にはそうではないこともあります。

その場合に、元夫が家庭裁判所に嫡出否認調停を申し立てることが可能です。つまり、女性側が主体的に嫡出否認手続きをすることはできません。嫡出否認手続きをしてほしい旨を元夫に伝え、対応してもらう必要があります
嫡出否認調停には、以下の書類が必要です。

  • 申立書
  • 戸籍謄本
  • 子どもの戸籍謄本
  • 1200円分の収入印紙と郵便用の切手
  • 親子鑑定を行う場合にはその鑑定費用


申立書には「肉体関係を持っていなかった」「必ず避妊方法を講じていた」などとして、離婚後300日以内に生まれた子どもが、自身の子どもではないことを記載します。

4、離婚や再婚の相談は弁護士へ

再婚禁止期間に妊娠をして、出産予定日が離婚後300日以内とされている場合は早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。特に以下のようなケースは弁護士への相談が得策です。

● 元夫が協力的でない可能性がある
嫡出否認の手続きが必要な場合は、元夫の協力が欠かせません。ところが、元夫が離婚に反対していた場合や、新たにパートナーができていることに否定的な場合、嫡出否認の手続きに協力をしてくれない可能性があります。

元夫にとっても、他人の子どもが実子とされるデメリットは非常に大きいものです。しかしながら、復縁を希望している、元妻の人生の破綻を望んでいるなどの場合はあえて他人の子どもを実子として受け入れるおそれがあります。このような場合には、元夫との交渉を、元妻が直接行うことは、あまりおすすめできません。

● 元夫からDVを受けていた
元夫が、暴力を振るっていた場合、女性だけでなく新たに誕生する子どもにも危害が加えられるおそれがあるため、現住所等を隠す必要があります。
しかしながら、嫡出否認の手続きのためには、元夫に現住所を知らせなければなりません。慎重な対応が求められますので、まずは弁護士に相談をしましょう。

5、まとめ

再婚禁止期間に妊娠をした場合、妊娠時期によっては元夫の子どもとして出生届を提出せざるを得ない可能性があります。また、元夫にその存在を知られたくないために出生届を提出したくない、というケースも少なからず存在します。

このようなケースでお悩みの方はベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士にご相談ください。詳しくお話を伺った上で、子どもの将来を含めてベストな解決方法をアドバイスいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています