SNSのやりとりは不倫の証拠になる? 見つけたらすべきことを解説
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厚生労働省の発表している人口動態総覧によると、令和5年に大阪府では1万4,556組の夫婦の離婚が成立しています。
離婚原因のひとつとして挙げられるのが、配偶者の不倫です。LINE、InstagramなどのSNSをきっかけに不倫関係となる「SNS不倫」を理由に離婚するケースもあります。
配偶者がSNSを通じて不倫している疑いがある際、SNSでのやりとりを不倫の証拠とすることはできるのでしょうか? やりとりを見つけた場合の対応と併せて、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説していきます。
1、SNSでのやりとりは不倫の証拠となる?
SNSでのやりとりを、不倫の証拠とすることは可能なのでしょうか。詳しく紹介します。
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(1)不貞行為とは?
不倫は、法律用語で「不貞行為」と呼ばれ、裁判でも離婚ができる理由として認められる違法行為です。不貞行為は、典型的には、婚姻あるいは婚約をしている者が、自らの意思で配偶者以外の相手と肉体関係を持つことを指します。
もっとも、不貞行為の概念も一義的ではなく、特に損害賠償を請求するような場面においては、必ずしも性行為の存在が不可欠というわけではありません。判例上も夫婦共同生活を破壊するような性行為類似行為が存在すれば不貞行為に該当し得るとされています(東京地裁令和3年2月16日参照)。不貞行為とされるケースが多い例- 配偶者以外の相手と肉体関係をもつ(性器の挿入や愛撫)
- 売春や風俗で肉体関係をもつ
- ラブホテルに配偶者以外と滞在する
不貞行為と判断するためのポイントは、典型的には肉体関係の有無です。そのため、2人きりでの食事やドライブのほか、手をつなぐ、キスやハグをするといった行為、SNSでの恋愛めいたやりとりも、直ちには不貞行為として認められないでしょう。
なお、異性だけでなく、同性の相手との肉体関係でも不貞行為とみなされる場合があります。実際に令和3年2月には、同性間の性的関係が不貞行為に該当するとして、東京地裁が不貞行為をした妻と相手側の女性の損害賠償責任を認めた事例もあります。 -
(2)不貞行為の証拠
訴訟上はもちろんのこと、交渉をスムーズに行うためにも不貞行為があったことを裏付けるには、証拠が必要です。不貞行為の証拠となる可能性があるものとしては、以下が挙げられます。
- 性行為の写真、動画
- 不貞行為を認める会話の録音、念書
- 不貞行為があったと推測できるSNSやメールでのやりとり
- 不貞行為があったと推測できる不倫相手との通話履歴
- ホテルの領収書やクレジットカードの明細書
- 不貞行為について書かれた日記や手紙、メモ
- 興信所や探偵事務所からの報告書
上記のように、SNSのやりとりも不貞行為の証拠になり得ます。ポイントは、SNSでのやりとりから、肉体関係があったことがわかるかどうかです。もっとも、写真の人物と不貞相手との同一性、ホテルの領収書が不貞相手とのものといえるのか、不貞の時期はいつなのか等、当該証拠から不貞相手との不貞行為をどのように立証できるのかは慎重に吟味しなければなりません。不貞行為の証拠となる可能性が高いSNSでのやりとりの例をいくつかご紹介しましょう。
- 「昨日は気持ちよかったよ」「またあのホテルでエッチしようね」など性行為があったことがわかるやりとり
- 「旅行楽しかったね」「また泊まりがけで行こうね」などのやりとり
- ホテルのベッドで撮ったツーショット写真や、不倫相手がわかる性行為中の写真などの送信履歴
このようなSNSのやりとりは、十分な証拠になるでしょう。
2、不倫相手とのSNSのやりとりを証拠として残す際の注意点
不貞行為の証拠を残すため、配偶者のスマホからSNSを開こうと考えている方もいるかもしれません。しかし、配偶者のスマホからSNSを勝手に見ることは、プライバシーの侵害や不正アクセス禁止法違反などに当たる可能性があるため、注意が必要です。
また、違法に記録した証拠は「違法収集証拠」と呼ばれ、訴訟時に裁判官から重大な違法性があると判断されると、証拠として使えなくなることもあります。これを踏まえたうえで、SNSのやりとりを証拠にしたい場合は、以下のような注意点をおさえておきましょう。
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(1)SNSのやりとりを保存する
配偶者のスマホから、不貞行為があったと思われるSNSのやりとりを確認できた場合、まずはやりとりを記録しましょう。内容をメモする方法もありますがSNSのやりとりを開いた状態にし、配偶者のスマホ画面ごとご自身のカメラで撮影して保存するのも有効です。
カメラで撮影して保存する際は、メッセージのやりとりを途切れなく、全て保存するようにするとよいでしょう。重要と思われる一部分のみ保存しても、前後のやりとりが不明で、証拠としての価値が損なわれる可能性があります。 -
(2)メッセージの送信日時・相手のアカウントを記録しておく
SNSでのやりとりを証拠として残す場合は、そのメッセージが送信された日時と相手のアカウントを記録しておきましょう。
もし、不貞行為に対して慰謝料請求をする場合は、不貞行為の期間が長く回数が多いほど、慰謝料の金額が高くなる傾向にあるとされます。送信された日時を残しておくことで、不貞行為が行われた期間や回数を証明しやすくなるでしょう。
また、SNSでやりとりをしている不倫相手が誰なのか明確にすることも、大切なポイントです。相手の特定につなげるためにも、相手のアカウント名やアカウントIDなども記録しておきましょう。 -
(3)SNSのやりとりを消してはいけない
SNSでのやりとりで不貞行為が発覚すると、ショックのあまりやりとりの履歴を消したくなってしまうかもしれません。しかし、やりとりを消せば、証拠もなくなってしまいます。証拠がないと、不貞行為について追及しても、相手に言い逃れされてしまう可能性もあるでしょう。
また、不貞行為を理由に離婚を考えている場合、夫婦での話し合いがまとまらず、調停委員による調停離婚や、裁判官による離婚裁判に発展することがあります。その際、不貞行為の証拠の有無は重要になります。証拠がなければ、配偶者の不貞行為を証明できず、離婚や慰謝料請求が認められなくなります。
不倫相手との生々しいやりとりを消したい気持ちにもなるかもしれませんが、離婚や慰謝料請求などを行いたい場合は、証拠がなければ不利になるため、絶対に消さないようにしましょう。
3、不倫相手とのSNSのやりとりを見つけた後にすべきではないこと
不倫相手とのSNSのやりとりを見つけた後に、やってはいけないことを解説していきます。
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(1)感情的になって不倫相手とDMなどでやりとりする
不倫相手とやりとりしている配偶者のアカウントを見つけると、つい感情的になってしまうかもしれません。DM機能などで「あなたが浮気相手ですね?訴えます」などと、送りたくなってしまうこともあるでしょう。
しかし、やりとりを見つけてすぐにそういった行為をしてしまうと、相手にSNSのアカウントを削除されて、連絡が取れなくなってしまう可能性があります。
DMでのやりとり以外にも、不倫相手のSNSの投稿などから、相手の身元を特定できたり、配偶者と不倫相手が会うタイミングを推測できたりすることもあります。興信所や探偵事務所に依頼した場合、投稿の情報をもとに尾行して、不貞行為の証拠が取れることもあるでしょう。ただ、DMで不倫相手に連絡をしてアカウントを削除されてしまっては、投稿の情報も入手することができなくなってしまいます。 -
(2)SNS以外の証拠がないまま配偶者を問い詰める
SNS上のやりとりのみを証拠として配偶者を問い詰めると、「それはふざけて友達と送りあっただけだ」などと言い逃れられてしまう可能性があります。また、問い詰められた配偶者が不倫相手に連絡して、証拠を消したり、不倫相手を逃がしたりすることもあるでしょう。
それを防ぐために、SNSのやりとり以外の証拠も必ず集めておくことが大切です。
4、SNSで不倫の証拠を見つけたら弁護士に相談を
SNSで配偶者が不倫をしている疑いがある場合、まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士は、見つけたSNSの証拠が有効かどうか、法的な視点で調査ができます。また、弁護士に相談すれば、SNSのやりとり以外の証拠の集め方のほか、配偶者や不倫相手を提訴する際に有効な証拠についてなどのアドバイスを受けることも可能です。
さらに弁護士に代理人を頼むことで、自分は配偶者や不倫相手と会わずに、離婚手続きや慰謝料請求などの交渉・対応を任せられます。万が一、不倫相手や配偶者が示談に応じず、調停や裁判に発展した場合も、提訴の手続きや弁論の対応を一任することが可能です。
5、まとめ
配偶者のSNSでのやりとりは、その内容次第で不倫の証拠になり得るでしょう。
配偶者の不貞行為をうかがわせるSNSでのやりとりを見つけた場合は、感情的になって相手を問い詰めたり、やりとりを消したりせず、まずは記録を残すのがポイントです。また、SNSのやりとり以外の証拠がないか、探してみましょう。
配偶者がSNSで不倫している可能性があり、どう対応すればよいかお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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