自転車レッドカードや自転車イエローカードをもらうと罪に問われる?
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自転車は、運転免許を取得する必要がなく、車両価格も安価で誰もが気軽に利用できる、生活においてもっとも身近なモビリティです。令和3年 豊中市自転車活用推進計画によると、豊中市における代表交通手段の19.3%を占めており、多くの市民が自転車を利用していることがわかります。
環境への配慮や健康志向などから自転車の利用者は増えていますが、同時に、自転車の交通違反も問題視されるようになりました。警察も危険な運転者に対する取り締まりを強化しており、交通違反を犯すと「レッドカード」や「イエローカード」などとも呼ばれる「自転車指導警告カード」が交付されます。
本コラムでは、自転車による交通違反を犯したときにレッドカードやイエローカードを交付された場合の処分について解説します。
1、「自転車指導警告カード」とは? レッドカード・イエローカードとは違う?
「自転車指導警告カード」とは、自転車の運転で交通違反があったときに警察官から交付される警告票のひとつです。
わかりやすく馴染みやすい「自転車レッドカード」や「自転車イエローカード」という名称で呼んでいる地域もあります。
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(1)自転車指導警告カードが交付されるのはどんなとき?
自転車のことを「歩行者と同じ立場だ」と考えている方は少なくありません。
たしかに、悲惨な交通事故のなかには、車やバイクが自転車に接触して、自転車の運転者が死傷したケースが多いので、自転車のことを交通弱者だと考えてしまいがちです。
しかし、自転車は法律の定めに照らすと「軽車両」、つまり車のひとつに分類されています。当然、車なので道路交通法などの規定を守らなくてはなりません。
自転車指導警告カードが交付されるのは、自転車の運転において次のような違反行為があった場合です。一般的な違反とあわせて、大阪府内で特に取り締まりが強化されている違反を挙げていきます。
- 信号無視(道路交通法第7条違反)
- 酒酔い運転(同法第65条1項違反)
- 一時停止違反(同法第43条違反)
- 歩行者通行妨害(同法63条の4第2項違反)
- 二人乗り(同法第57条2項・大阪府道路交通規則第11条違反)
- 携帯電話・スマホの「ながら運転」(同規則第13条3号違反)
- ヘッドホンなどを使って大音量で音楽を聴きながらの運転(同規則第13条5号違反)
これらの行為のほかにも、自転車を運転する際は「車」として交通法規を遵守しなければなりません。
遮断機が閉じようとしているのに踏切に入る、ブレーキを備え付けていない、夜間に灯火をつけない、傘を差したまま運転するなど、さまざまな行為が取り締まりの対象になると心得ておきましょう。 -
(2)何度もカード交付を受けると罰があるのか?
自転車指導警告カードは、運転免許のように点数が加算・累積される仕組みのものではありません。
ただし、何度も違反の取り締まりを受けている状況なら、すでに現場の警察官から「危険な運転の常習者だ」とマークされているかもしれません。
警告を無視して違反行為を繰り返していると厳しい処分を受ける危険があるので、一度でも警告カードの交付を受けたら自分の運転を反省して交通ルールを守るように気を付けましょう。
2、自転車の交通違反は「赤切符」で処理される
自動車やバイクで交通違反を犯すと「違反切符」の交付を受けて、違反点数が加算されたり、反則金の支払いを求められたりします。
一方で、自転車の交通違反では基本的に注意だけで済まされたり、自転車指導警告カードを交付されるだけで、カードが累積したからといってペナルティーはありません。
すると「自転車なら違反を繰り返しても構わない」と考えてしまうかもしれませんが、それは間違いです。
自転車の交通違反は、違反切符のなかでも処分が厳しい「赤切符」で処理されるおそれがあります。
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(1)「赤切符」とは?
「赤切符」とは、交通反則通告制度の対象にならない重大・悪質な違反について、より重たい点数を加算したうえで、さらに「刑事責任を問うために事件として扱う」という内容を告げるものです。
反則金を支払い、刑事処分を免れるといった手続きはできないため、刑事裁判で裁かれ、刑罰を受けることになります。 -
(2)自転車の交通違反なのに切符処理されるのか?
「自転車は違反切符で処理されない」と誤解している方がいるかもしれませんが、実は自転車による交通違反でも違反切符による処理は可能です。
ただし、運転免許の対象となる乗り物が受けられる「交通反則通告制度」が適用されないので、白切符や青切符は交付されません。
軽微な違反なら自転車指導警告カードの交付で済まされるケースが大半ですが、悪質な違反行為であったり警告を無視して違反を繰り返していたりすると、点数や反則金による処分ではなく「事件」として扱われる赤切符によって処理されます。
なお、自転車の交通違反で赤切符を交付されたとしても、運転免許をもっていなければ、免許停止・免許取り消しといった処分は受けません。
ただし、自転車の運転で3年以内に2回以上の信号無視等の危険行為を行い、交通違反として取締りを受けた、または、交通事故を起こして送致されると、都道府県の公安委員会から「自転車運転者講習」の受講を命じられます。さらに、自転車運転者講習の受講命令を無視していると5万円以下の罰金が科せられてしまうので注意が必要です。
3、自転車の交通違反でも前科がつくかも! 軽く考えてはいけない理由
交通違反とは、道路交通法をはじめとした交通関係の法令に違反する行為の総称です。交通違反は「犯罪」であり、場合によっては「前科」がついてしまう危険もあります。
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(1)悪質な違反には点数や反則金ではなく「刑罰」が下される
交通違反といえば「点数が加算される」、あるいは「反則金の支払いを求められる」と考えがちですが、白切符や青切符による処分を受けられない悪質な違反は刑事事件として扱われてしまいます。
窃盗などの事件と同じように刑事裁判が開かれ、裁判官によって審理され、有罪判決を受けると刑罰が科せられるので「たかが交通違反」などと考えてはいけません。 -
(2)罰金で済んだ場合でも前科になる
交通違反にあたる行為には、法律による罰則が定められています。
たとえば、一時停止違反なら「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」、傘差し運転やながらスマホ運転なら「5万円以下の罰金」です。
罰金の場合、言い渡しを受けた金額を納付することで刑罰が終了しますが、安心してはいけません。罰金も法律で定められている刑罰のひとつなので「前科」がついてしまいます。
警察や検察庁といった捜査機関に前科の情報が記録されてしまうだけでなく、職業・資格などにも制限がかかってしまうかもしれないのです。
4、人身事故につながれば大変な事態につながる危険もある
自転車は車のひとつなので、自転車の運転で事故を起こすと交通事故として扱われます。
相手にケガがあれば「人身事故」です。
自転車だから、運転者が学生・生徒だからといった事情は関係ありません。
もし人身事故を起こしてしまうと、自転車でも大変な事態につながります。
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(1)危険な運転で相手にケガをさせると刑務所に収監されるかもしれない
令和4年2月、東京地裁は、飲食宅配代行サービスの配達員が自転車で歩行者をはねて死亡させた事故について、禁錮1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
一方、平成23年11月には、信号機や横断歩道のない5車線の道路を横断したことで死亡事故を誘発したとして、自転車の運転者に禁錮2年の実刑判決が言い渡された事例もあります。
このように、執行猶予が付されることもありますが、執行猶予なしの実刑判決が下ることもあります。
昨今は自転車の危険運転に対する社会的な批判が強く、裁判官も厳しい判断を下す傾向があります。
危険な違反を犯した、相手に重大な死傷をもたらしたなどの状況があれば、懲役・禁錮の実刑判決を受ける危険があることを心得ておきましょう。 -
(2)巨額の損害賠償請求を受ける事例も多い
交通事故を起こしてしまうと、被害者に対して治療費や慰謝料などを支払う責任が生じます。
この点も、自転車だから、加害者が未成年だからといったといって免除されるものではありません。
そして、相手に死亡や後遺症といった重大な被害を与えてしまうと、とんでもない高額賠償を求められるおそれがあります。
- 小学生が無灯火で自転車を運転し、歩行者の女性と衝突して後遺症を負わせた
→9521万円の賠償命令 - 通行違反を犯した高校生の自転車が成人男性の運転する自転車と衝突して相手に後遺症を負わせた
→9266万円の賠償命令 - 男性が運転する自転車が交差点進行中に歩行者の女性と衝突して死亡させた
→6779万円の賠償命
大阪府では平成28年7月から自転車保険の加入が義務化されているので、高額賠償が命じられても大きな負担は避けられるかもしれません。
しかし、高額賠償の負担を避けられても、被害者に対して重大な死傷を負わせたことには変わりありません。
このような事態を起こさないよう、交通違反を犯して自転車指導警告カードの交付を受けた場合は、自分自身の運転を見直す機会だと考えて、安全運転に徹するようにしましょう。
- 小学生が無灯火で自転車を運転し、歩行者の女性と衝突して後遺症を負わせた
5、まとめ
自転車で交通違反を犯すと「自転車指導警告カード」の交付を受けます。
何枚も交付されたからといって直ちに罰を受けるわけではありませんが、違反を繰り返していると赤切符で処理されて、厳しい処分を受けるかもしれません。
また、危険な運転で事故を起こしてしまうと、自転車の運転が原因でも刑罰や高額の賠償請求を受けるおそれがあるので、指導・警告をよい機会だと考えて今後の安全運転に向けた教訓としましょう。
自転車の運転で交通違反を犯して刑事事件に発展したり、交通事故を起こして刑事責任や損害賠償などの責任を追及される事態になってしまったりすると、個人の力による解決は困難です。
すぐに、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士へご相談ください。
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