パクリは罪になる?|著作権法違反の刑罰や民事責任

2024年03月11日
  • 財産事件
  • パクリ
パクリは罪になる?|著作権法違反の刑罰や民事責任

大阪はユーモアにあふれつつも「良いものは良い」と正直に評価する気質をもった街です。だからこそ、他者の商品やアイデアでも積極的に取り入れていくので、時に「パクリ文化」があるともいわれています。過去には、北海道の銘菓をもじった名称の菓子を芸能事務所が販売してトラブルに発展したこともありました。

いわゆる「パクリ」と呼ばれる行為は、法的にみると「著作権法」の定めに違反する可能性があるほか、損害が生じさせた場合には民事上の賠償責任が発生することにも注意が必要です。

本コラムでは「パクリ」で罪を問われるケースやパクリで追及される責任の内容、具体的な解決策について、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。

1、著作権法とは?

まずは、著作権法の概要を解説します。

  1. (1)著作権法が存在する理由

    著作権法とは「著作物・実演・レコード・放送・有線放送に関して、著作者の権利およびこれに隣接する権利を定めることで、文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、文化の発展に寄与すること」を目的として定められた法律です。

    「著作物」とは、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものを指します。
    「著作者」は、著作物を創作した者のことです。
    そして、著作物を利用する権利、すなわち「著作権」は、まず著作者が占有します。

    ただし、著作物のなかには、演技や演奏によって表現したり、データとして記録媒体に書き込むことで再生を可能にしたり、インターネットでの配信を可能にしていたりするものがあります。
    これらは著作者のみでは表現したり広めたりするのが困難です。
    そこで、著作権法では、著作物の流通に関して重要な役割を担う実演家や事業者などの権利も保障しています。
    これを「著作隣接権」といえいます。

    このように、本や書籍、論文、絵画、音楽といった著作物を生み出した人や取り巻く事業者などの権利を保護することで、勝手に使用される事態を防ぎ、かつ多くの人に適切な方法で広められる環境を守るための法律が、著作権法なのです。

  2. (2)著作権法違反になる行為の例

    著作権法は、著作者などに保障されている権利を侵す行為を禁止しています。
    他者が権利を有している著作物について、許諾を受けないまま無断で使用すると「著作権法違反」です。

    著作権法違反になりうる行為としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 市販されている書籍をコピーして販売した
    • 新聞や雑誌の記事を参考資料としてコピーし、部内で配布した
    • 有料で配信されている音楽データを自身が編集した動画内でBGMとして使用した
    • 他者が公開しているサイト内の画像をダウンロードして自分のサイトで使った
    • 他人が発表した論文の内容にわずかな改変を加えて自身の論文として発表した

2、パクリが問題になるケース|複製・翻案とは?

以下では、いわゆる「パクリ」と呼ばれる行為が著作権法違反になってしまうケースについて解説します。

  1. (1)複製権の侵害にあたるケース

    著作権法における「複製」とは、印刷・写真・複写・録音・録画などの方法によって有形的に再製することを指します。
    他者が書いた脚本を使って無断で演劇を上演したり、他者が作った図面に従って建築物を完成させたりする行為も同様です。

    元となる著作物と比較したときに、改変なしに、あるいはごく小程度の改変を加えたのみで、新たな創作性を付加することもなく、しかも本質的特徴を直接感得できるものは、複製にあたると解釈されています。
    そして、複製する権利は「複製権」として著作者や著作隣接権をもつ事業者などが有するため、無断で複製してはいけません。

    具体的には、以下のような場合には、いわゆる「パクリ」が複製権の侵害にあたりうることになります。

    • 他者が書いて公開している文章をコピーして自分のサイトやブログで公開した
    • 他者が撮影・公開している風景などの画像を自社のサイトや広告で使用した
    • 他者が作成した絵画の配色だけを変えて自身の作品として使用した
    • 他者が作成したフィギュアの大きさを変えて自身の作品として販売した


    「見た目そのまま同じ物を作る」という行為が複製にあたるのはもちろんのこと、配色や大きさなどを変えただけで元の著作物をよりどころとする「依拠性」があるものも複製にあたることに注意が必要です。

  2. (2)翻案権の侵害にあたるケース

    「翻案」とは、既存の著作物を原案・原作などとして新たに別の作品を創る行為を指し、著作権法では翻訳・編曲・変形・脚色・映画化などが例示されています。
    パロディなどの「二次的著作物」は翻案にあたると解されていますが、「パクリ」との線引きが難しい場合もあります。

    元の著作物と比較して、ある程度の改変を加えることで新たな創作性を付加しつつも、本質的特徴を直接感得できるものは翻案にあたるといえます。
    しかし、著作物を翻案する「翻案権」も著作者などがもつ権利であるため、権利者の許諾なしで翻案する行為は翻案兼侵害となるのです。
    具体的には、以下のような行為が翻案兼侵害にあたる可能性があるます。

    • 原作者に無断で小説を映画化した
    • イメージキャラクターの作成にあたり他者の著作物参考にして似たものを作成し、公開した
    • 日本語の楽曲を外国語に翻訳して公開した

3、著作権法に違反すると刑事告訴される? 民事責任はどうなる?

「パクリ」が複製権や翻案権を侵害して著作権法違反になる場合は、著作権者などから法的措置を受ける危険が高まります。
そして、著作権法違反を犯すと、刑事告訴を受けたり、民事責任を問われたりする可能性があるのです。

  1. (1)悪質な違反は刑事告訴される可能性もある

    著作権法違反は「親告罪」です。
    親告罪とは、検察官が刑事裁判を提起する「起訴」の手続きにあたって、被害者などの権利者による「告訴」を要する犯罪です。
    告訴とは、犯罪の被害者などが、捜査機関に対して「犯人を厳しく罰してほしい」と求める手続きであり、一般的には「刑事告訴」とも呼ばれています。

    完全な複製にあたるのに「パクリではない」と否定したり、著作権者からの警告を無視したりするといった対応をとっていると、相手が刑事告訴に踏み切る場合もあるでしょう。
    警察が刑事告訴を受理すると、呼び出しを受けたり、逮捕されたりして、著作権法違反の容疑で取り調べが行われます。

    警察の捜査が終わっても、さらに検察官へと送致されて取り調べなどの捜査が進められ、検察官が起訴すると刑事裁判へと移行します。
    裁判官が有罪判決を下すと刑罰が科せられることになりますが、著作権法違反は特に罰則が厳しい犯罪だという点は十分に心得ておいてください。

    パクリ行為が複製権や翻案権といった権利を侵し、著作権法違反が成立すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられることになるのです。

  2. (2)損害が発生していれば民事責任を問われる可能性もある

    他者の著作権を侵害すると、刑事的な面だけでなく、民事的な面でも厳しく責任を追及される可能性があります。

    著作権侵害に関しては、主に以下のような請求を受けるおそれがあります。

    • 差止請求
    • 著作権者などには、著作権侵害にあたる商品やコンテンツの使用の差し止めを求める権利があります。
      差止請求を受けると、商品の回収、コンテンツの削除や配信停止などを求められることになります。

    • 名誉回復措置請求
    • 著作権を侵害した者は、著作者などの権利者の名誉・声望を回復するよう措置を求められる可能性があります。
      具体的には、メディアに対して著作権侵害を侵した旨を公表して謝罪するといった対応をとる必要があります。

    • 損害賠償請求
    • 著作権を侵すと、権利者が被った損害に応じて賠償金の支払いを求められる可能性も高いといえます。
      ここでいう「損害」については、著作権を侵して得た利益の額を推定額とする旨の規定があります。
      たとえ著作権侵害によって利益を得ても、損害賠償を請求されたらその利益は手元に残らないと考えておきましょう。

4、パクリを疑われてトラブルになったら弁護士に相談を

「パクリ」を疑われてトラブルに発展してしまえば、自分の力で解決を図るのは難しいといえます。
著作権に関するトラブルは非常に複雑であるため、専門家である弁護士に相談することが大切です。

  1. (1)法的に問題があるのかどうかを正確に判断できる

    「パクリだ!」と著作権侵害を指摘されても、必ず違法になるわけではありません。
    特に、同じジャンル・テーマに関する作品は偶然にも似たものになるケースが多いため、思いがけず著作権侵害の疑いをかけられてしまう可能性もあります。

    知的財産トラブルに詳しい弁護士に相談すれば、実際に著作権侵害にあたるのかを正確に判断することができます。
    弁護士であれば、著作権侵害にあたる場合は穏便に解決するための対応を、著作権侵害にあたらない可能性があるなら相手に対抗するための対応を、それぞれ適切に行うことができます

  2. (2)弁護士に相談する際に持参する物

    自身の著作物が著作権侵害にあたるかどうかを弁護士に相談する際には、指摘を受けている自身の作品や製作物、相手からの訴状や警告文・メッセージなどを持参していきましょう。
    正確な判断のためには詳しい資料が必要であるため、できるだけ詳しい資料を用意することが大切です。

    なお、弁護士は法律などで利益相反にあたる相談・依頼を受けられないという決まりがあります。
    たとえば、すでに「パクリだ!」と指摘している側の相談や依頼を受けている場合には、パクリを指摘されている側の相談・依頼は受けられません。
    こういった事態を避けるため、法律事務所では必ず利益相談=コンフリクトのチェックを行っています。
    相談の際には、正確なコンフリクトチェックのため身分証を持参してください。

5、まとめ

他人の著作物を「パクる」と、著作権法に違反する危険があります。
ユーモアやジョークのつもりだったとしても違法であり、著作権侵害を指摘されれば刑事・民事の両面で責任を追及される事態に発展する可能性が高いといえます。
ただし、そういった事実もないのに「パクリだ!」と疑いをかけられてしまう場合もあります。
著作権法は非常に難しい法律であり、個人間では他者の著作権を侵しているのかを判断することさえ困難であるため、パクリを指摘されてトラブルになったら、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
著作権侵害に関するトラブルは、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
知的財産トラブルの解決実績を豊富に持つ弁護士が、円満な解決を目指して対応いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています