夫が電車内での置き引きで逮捕された!刑の重さや対処法を大阪の弁護士が解説
- 財産事件
- 置き引き
- 電車
- 豊中千里中央
- 大阪
- 弁護士
警察庁が毎年発表している犯罪統計書「年次別 府県別 窃盗 手口別 認知・検挙件数及び検挙人員」によれば、大阪府では平成30年の置き引き認知件数が4457件となっています。これは全国でもっとも高い数値であり、大阪府は置き引きが発生しやすい府県といえるでしょう。
なかには、「夫が電車で置き引きをした、と警察から連絡がきた」など、家族が置き引きをしてしまった、という状況に突然直面する方もいるかもしれません。
今回は、ご家族が置き引きで逮捕されたという連絡を受けたケースにおいて、どのように対処すべきか、また逮捕後の流れや刑罰の重さなどについて、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士がご説明します。
1、置き引きはどんな罪で、刑罰の重さはどのくらい?
まずは置き引きがどのような行為なのか、またどのような罪に当たるのかを見ていきましょう。
-
(1)置き引きという行為
置き引きとは、置いてある他人の物を持ち去ることです。たとえば、電車内での置き引きとしては、以下のような行為が挙げられます。
- 持ち主がお手洗いへ行ったすきに座席や網棚のバッグを持ち去る
- 居眠りしている乗客から財布を気付かれないように盗む
- 床や網棚に置かれた荷物を持ち去る
いずれも所有者の同意を得ることなく対象物を持ち去っており、犯罪に当たります。
-
(2)刑法上どんな罪となるか
置き引きが該当する罪名として考えられるのは、窃盗罪(刑法第235条)もしくは占有離脱物横領罪(同法第254条)です。
窃盗罪は、「他人の財物」を「窃取」したことによって成立します。刑罰は、「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」です。
占有離脱物横領罪は、「占有を離れた他人の物」を「横領」したことによって成立します。刑罰は、「1年以下の懲役」または「10万円以下の罰金」もしくは「科料」です。なお、科料とは1000円以上1万円未満の金銭を徴収されることであり、1万円以上の金額から「罰金」と呼ばれます。
比べてみると、他人の物を持ち去るという行為態様は同じですが、窃盗罪と占有離脱物横領罪とでは、刑罰の重さが異なることがわかります。では、両罪には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。 -
(3)窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い
窃盗罪と占有離脱物横領罪の主な違いは、持ち去りの対象物に対する被害者の占有(管理・支配)の有無にあると考えられます。
窃盗罪の場合は被害者による管理・支配が及んでいる財物を、占有離脱物横領罪の場合は被害者による管理・支配が及んでいない物をそれぞれ持ち去る行為です。つまり、他人が事実上支配している物を無断で持ち去るからこそ、窃盗罪のほうがより重い刑罰となっています。
一般的に、置き引きは窃盗罪が適用されることの多い傾向です。しかし、実際には、被害者による管理・支配が及んでいた物かどうか、ということを明確に判断する法的な基準はありません。
被害者が放置していた時間やそのときの状況などによって、窃盗罪と占有離脱物横領罪、どちらが適用されるのかは異なります。状況をしっかり確認した上で慎重に判断する必要があるので、置き引きをしてしまった場合はまず、弁護士に相談されることをおすすめします。
2、置き引きで逮捕されるケースとは?
置き引きは窃盗罪もしくは占有離脱物横領罪が適用されるため、発覚すれば逮捕される可能性があります。
逮捕の2パターンを確認しておきましょう。
-
(1)現行犯人としての逮捕
まさに他人のカバンや財布などを持ち去ろうとしているところを見つかり、その場で逮捕されるケースです。一般的に、「現行犯逮捕」とも呼ばれています。
「逮捕」と聞くと、警察官のみ可能なように思えますが、現行犯であれば一般人でも逮捕することが可能です。これを私人逮捕といい、確保されたのちに、警察に引き渡されることとなります。 -
(2)後日の通常逮捕
その場では見咎められなかったとしても、駅の防犯カメラや監視カメラに置き引きの証拠映像が残っているなどで、後から逮捕されることもあります。この場合、裁判所の発行する逮捕状に基づいて行われる「通常逮捕」という方法で逮捕されます。
通常逮捕の場合、警察官が加害者の自宅を訪れたり外出している加害者に声をかけたりするなどして、逮捕を行います。なお、犯行当日ではなく後日に逮捕されることから、「後日逮捕」とも呼ばれています。
3、置き引きで逮捕されてからどうなる?
置き引き、つまり窃盗罪もしくは占有離脱物横領罪の容疑で逮捕された場合には、どのような流れとなるのでしょうか。
逮捕後の流れを見ていきましょう。
-
(1)警察と検察での取り調べと勾留
まず警察では最大48時間の取り調べを受け、それから検察へ送致されます。検察では最大24時間の取り調べが行われ、合計72時間、逮捕後に取り調べを受けることになります。
被疑者は取り調べ期間中、留置場に入れられ、たとえご家族であっても面会することはできません。唯一会えるのは弁護士のみとされています。
逮捕後の取り調べでは不十分の場合、検察官は裁判所に対し、勾留請求を行います。勾留とは、罪証隠滅や逃亡を防ぐため、被疑者や被告人の身柄を拘束しておくことです。
起訴前の被疑者段階での勾留は原則10日間を上限として認められ、一度だけ延長が可能です。つまり、逮捕されてから最長で23日間の身柄拘束期間があり得ることになります。 -
(2)勾留と保釈、裁判
起訴された後も多くの場合は勾留され身柄は拘束されたままです。そのような場合には保釈請求を行います。
保釈とは、保釈金を納めることによって、起訴された後の被告人が一時的に身柄を解放されることをいいます。保釈されるには保釈申請が必要となり、被告人や法定代理人、保佐人、配偶者、直系親族、兄弟姉妹のほか、弁護士も申請を行うことが可能です(刑事訴訟法第88条)。
その後、刑事裁判となり法廷で審理され、有罪か無罪か、また有罪の場合は量刑などが判断されます。 -
(3)家族にできること
本来なら、取り調べ中の被疑者を励まし、支えられればよいのですが、すでにご説明したように逮捕後72時間は面会できません。また、勾留後、面会が可能となった後でも、本人は自分の刑事処分に向けて自由に動くことはできません。そこで、ご家族が本人のために弁護士を依頼するメリットとして、以下のようなことが考えられます。
- 逮捕後勾留前の外部と接触ができない段階で、弁護士に面会に行ってもらい、状況把握や外部との連絡手段を確保する
- 弁護士に検察官に勾留請求しないよう働きかけたり、裁判所に勾留請求を却下するよう意見書をだしたりしてもらう
- 起訴されたら保釈申請をしてもらう
- 刑が少しでも軽くなるように被害者との示談をまとめてもらう
- 弁護士と相談して、身柄解放された後の環境を整える
いずれも刑事事件を手がけた経験の豊富な弁護士に相談することで、早期解決を目指せるようになります。ご家族が置き引きで逮捕されたら、できるだけ早く弁護士に連絡するとよいでしょう。
4、まとめ
置き引きとはどのような行為・犯罪であるのか、もしも逮捕された場合の流れについてご説明してきました。
窃盗罪や占有離脱物横領罪では、盗んだり横領したりした物がさほど高価でなく、同種の前科や前歴がなければ、裁判までいかずに不起訴となることも珍しくありません。ただ、それには被害者への弁償や示談をしておくことが大事です。
また、逮捕される前に自首をすることで、刑罰が減軽されたり、不起訴処分となることも考えられます。
もしご家族やご自身が置き引きを行ってしまったなら、お早めにベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています