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一般人は逮捕できる? 私人逮捕の要件や仕組み

2022年06月20日
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一般人は逮捕できる? 私人逮捕の要件や仕組み

令和2年9月、大阪府和泉市議選に出馬していたプロレスラーの男性が、選挙活動中に盗撮犯を「私人逮捕」したことで大きな話題になりました。「捕まえて!」という声を聞き、逃げていた犯人を追跡・確保したうえで警察に引き渡したとのことです。

私人とは国や公共的な立場にない人、つまりは一般個人を指しますが、逮捕は警察に認められた特権だと理解している方も少なくないので、私人による「逮捕」が認められることに驚くことでしょう。

本コラムでは、一般人による「私人逮捕」の要件について触れながら、私人逮捕を受けた場合に取るべき行動などをベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。

1、一般人でも認められる「私人逮捕」とは?

冒頭で紹介した事例のように、逮捕の権限をもつ警察などの捜査機関に属する者ではなくても「逮捕」が認められることがあります。

まずは「私人逮捕」の意味や典型的なケースを確認していきましょう。

  1. (1)私人逮捕の意味

    「私人逮捕」とは、国家や地方自治体に置かれている捜査機関に属さない一般個人による逮捕を指し、別称として「常人逮捕」とも呼ばれています。

    そもそも「逮捕」は、日本国憲法第33条において定められている「令状主義」に則り、裁判官から逮捕状の発付を受けないと認められない強制処分です。裁判官に対して逮捕状発付を請求できるのは検察官と一定の階級以上の警察官であり、一般的な事件においては「警部以上の階級にある警察官」が請求権者となります。

    つまり、たとえ被害者であっても、私人には逮捕の権限どころか逮捕状を請求する権利すら認められていません。

    ただし、憲法第33条には「現行犯として逮捕される場合を除いては」と明記されているので、逮捕状の発付を必要としない現行犯逮捕については、私人にも許可されています

    わが国の刑事手続きにおいて認められている逮捕の種類は次の3つです。

    ● 通常逮捕
    逮捕状にもとづいて執行される逮捕です。
    日本国憲法が定める令状主義に則った原則的な逮捕だといえます。

    ● 現行犯逮捕
    まさに犯罪がおこなわれている現場において、逮捕状の発付を要せず執行できる逮捕です。

    ● 緊急逮捕
    一定の重大犯罪につき、逮捕状を請求する時間的な余裕がない状況において例外的に認められる逮捕です。逮捕時点では逮捕状を必要としないものの、逮捕後直ちに逮捕状を請求し、発付後は逮捕状を示さなければならないので「令状主義の例外」と位置づけられています。


    この3つのなかで私人逮捕が可能なのは令状主義にしばられない現行犯逮捕だけです。つまり、私人逮捕とは「私人による現行犯逮捕」を意味します

    刑事訴訟法第213条にも「現行犯人は、何人(なんぴと)でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と明記されています。

  2. (2)私人逮捕の典型的なケース

    実は、私人逮捕は意外にも身近なところで日常的におこなわれています。私人逮捕が認められている典型的なケースを挙げてみましょう。

    • 万引きの犯人を店員や警備員が捕まえた
    • 痴漢の犯人を周囲の目撃者が捕まえた
    • 繁華街で酔って他人に暴力を振るっていた酔客を取り押さえた
    • 交通事故を起こして逃げた車両を被害者が追跡して確保した


    なお、現行犯人を逮捕した私人は、刑事訴訟法第214条の定めに従い、直ちにこれを検察官または司法警察職員に引き渡さなければなりません。市中における事件では、その地域を管轄する警察に通報して身柄を引き渡すことになるでしょう。

    条文に「直ちに」と明記されているとおり、引き渡しや逮捕の報告はわずかな遅滞もなくおこなわれなければなりません。たとえば、万引きの犯人を逮捕した店員が「こちらで詳しく事情を尋ねてから判断しよう」と犯人の身柄を置いたまま事情聴取をすることは許されないことになります。

  3. (3)私人逮捕にはあたらないケース

    私人逮捕が認められるのは現行犯逮捕にあたる場合に限定されます。すると、通常逮捕や緊急逮捕にあたる逮捕行為は私人には許可されていません。

    誤った解釈を招きやすいのが「指名手配」された容疑者を発見・確保した場合です。掲示板のポスターなどで手配された人物を発見し、容疑者として確保しても、まさに今その場で罪を犯したわけではないので現行犯逮捕とはいえません。

    指名手配は、すでに逮捕状が発付されている容疑者を手配する手続きなので、通常逮捕が認められていない私人には指名手配犯を確保する権限がありません
    指名手配のポスターに「この人を発見したら捕まえて」ではなく「ピンときたら110番」と書いてあるのは、たとえ発見しても私人には逮捕する権限が認められていないからなのです。

2、私人逮捕が適法となる要件

私人逮捕は日本国憲法・刑事訴訟法によって法的に認められた行為です。
ただし、私人逮捕が適法となるのは厳格な要件を満たした場合に限られます。

私人逮捕が適法となる要件を確認しましょう。

  1. (1)現行犯逮捕・準現行犯逮捕であること

    私人逮捕が認められるのは、現行犯逮捕または準現行犯逮捕にあたる場合に限られます。

    ● 現行犯逮捕
    刑事訴訟法第212条1項に明記されている逮捕で「現に罪をおこない、または現に罪をおこない終わった者」が対象です。
    まさに目の前で犯行が起きている最中、あるいは目の間で犯行が完了した時点を指し、犯行と逮捕が時間的・場所的に接着している必要があります。

    ● 準現行犯逮捕
    犯行と逮捕の間に時間的・場所的な接着性が弱まった場合でも、刑事訴訟法第212条2項に掲げられている4つの要件を満たす場合は「準現行犯」として現行犯と同じ扱いを受けます。
    具体的には、以下のようなケースです。

    • 「泥棒、待て!」など、犯人として追呼されているとき
    • 被害品などの贓物(ぞうぶつ)や人を刺したナイフなど犯罪の用に供したと思われる凶器などを所持しているとき
    • 返り血など、身体や被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
    • 事件現場の付近で、警察官から「そこで何をしている」と呼び止められただけで逃走しようとするとき
  2. (2)軽微犯罪における逮捕の要件を満たしていること

    刑事訴訟法第217条には「軽微犯罪」における現行犯逮捕の要件が定められています。
    30万円以下の罰金・拘留・科料にあたる罪の事件では、次の要件を満たさない限り私人逮捕は認められません。

    • 犯人の住居もしくは氏名が明らかではない
    • 犯人が逃亡するおそれがある


    刑法の過失傷害罪や侮辱罪のほか、軽犯罪法違反や道路交通法違反といったケースで私人逮捕が認められるには、住居・氏名が不明、あるいは逃亡のおそれがあるといった要件を満たす必要があります。

3、私人による誤認逮捕を受けた! 逮捕者の責任を追及できるのか?

私人逮捕は、逮捕の要件や各種の刑罰法令を学んでいない一般個人でも可能なので、誤った解釈や見間違いなどによる「誤認逮捕」が起きやすいといえます。

私人による誤認逮捕を受けた場合、逮捕者の責任を追及することは可能なのでしょうか?

  1. (1)逮捕の要件を満たしている場合は違法にならない

    私人逮捕を含めた現行犯逮捕について、刑事訴訟法は「有罪になることが明らかだ」という証拠をそろえてから逮捕するように求めていません。これは、まさに眼前で犯行が起きている状況を目撃しており、犯人の取り間違いが起きてしまうおそれが極めて低いからです。

    逮捕の要件さえ満たしていれば、原則として逮捕行為そのものが違法となることはありません

  2. (2)行き過ぎた逮捕行為は違法となる可能性がある

    逮捕の際には、犯人の逃亡を防いだり、抵抗を抑えたりする必要が生じます。そこで、逮捕時の状況から、社会通念に照らして逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の有形力の行使が認められると考えるのが通説です。

    たとえば、相手の手を強くつかんで逃げられないようにする行為は、それだけをみれば刑法第208条の暴行罪が成立します。
    逃走する相手を抑えようとしてもみ合いになり、相手が転倒して負傷すれば同第209条の過失傷害が成立するでしょう。

    しかし、これらの行為が私人逮捕の際に起きており、逮捕のために必要かつ相当と認められる限度内の行為であれば、犯罪としての違法性が否定されます

    刑法第36条は「急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するためにやむを得ずした行為」を正当防衛として罰しない旨を規定しています。私人逮捕における有形力の行使は正当防衛にあたるため、刑事責任を問えないのです。

    ただし、逮捕行為が必要・相当と認められない場合はその限りではありません。たとえば、抵抗せず逃走の気配もみせていないのに馬乗りになって殴られた、一切身動きが取れないように全身をロープで縛られたといったケースは「過剰防衛」となるため、刑事・民事の両面で責任を問える可能性があります。

4、私人逮捕されたら直ちに弁護士に相談を

私人逮捕されると直ちに警察へと引き継がれます。逮捕・勾留による身柄拘束を受けたうえで検察官が起訴すれば刑事裁判へと発展し、刑事裁判で有罪判決を言い渡されれば刑罰を受けて前科がついてしまいます。

犯罪の容疑で逮捕されてしまい、早期釈放や厳しい刑罰の回避を望むなら弁護士のサポートは欠かせません。特に、私人逮捕がきっかけとなった事件では、逮捕行為に違法はなかったのか、誤認逮捕の可能性はないのかといった点が争点になりますが、逮捕された本人やその家族だけで証拠を集めて対抗するのは難しいので、弁護士の助けが必要です。

また、逮捕されたからといって必ず刑罰が下されるわけではありません。

被害者との示談交渉を進めて和解し、被害届が取り下げられれば検察官が不起訴処分を下して直ちに釈放される可能性もあります。不起訴となれば刑事裁判は開かれないので、刑罰を受けることも、前科がつくこともありません。

とはいえ、被害者との示談交渉を進めるのも個人で対応するのは困難です。迅速かつ穏便な解決を望むなら、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士に一任するのが安全でしょう

5、まとめ

現行犯逮捕に限っては、捜査機関に身を置かない一般個人による「私人逮捕」が認められています。

逮捕後は身柄拘束を受けたうえで起訴・不起訴が判断され、検察官が起訴に踏み切れば厳しい刑罰が科せられてしまう危険があります。

長期の身柄拘束や厳しい刑罰の回避には、弁護士のサポートが必須です。私人逮捕に関するお悩みや不安がある方は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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