私の遺産分割の割合はどれくらい? 法定相続人とケース別の法定相続分
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大阪国税局が公表している「相続税の申告事績」によると、令和元年度における大阪府の被相続人数(死亡者数)は9万410人でした。そのうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は、7599人でした。平成30年度の統計と比較しても、どちらの数字も大きく変動はないことから、毎年一定数の相続が発生していることがわかります。
親が亡くなったときには、親の遺産を分けるために、兄弟姉妹などが集まって話し合いをすることになります。親が遺言書を残していればそれに従って分ければよいですが、遺言書を残していなかったときには、どのように遺産を分けるかを話し合って決めなければなりません。そのときに気になるのが自分はどのくらいの財産をもらうことができるのかということでしょう。
今回は、遺産分割において相続割合はどのように決まるかについて、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスの弁護士が解説します。
1、誰が遺産を相続する?
被相続人がなくなり相続が開始したときには、まずは誰が被相続人の遺産を相続するかを確定しなければなりません。
以下では、誰が遺産を相続することになるのかについて説明します。
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(1)法定相続人とは
民法では、相続が開始したときに遺産を相続できる人の範囲を定めています。このように民法で定められている相続人のことを「法定相続人」呼びます。
被相続人が遺言書を残していたときには、法定相続人以外の方が遺産を受けとることがあります。しかし、遺言書がない場合には、民法の規定に従って、法定相続人が被相続人の遺産を相続することになります。
民法が定める法定相続人の範囲、以下のとおりです。
① 配偶者
被相続人が婚姻しており、その配偶者がいるときは、その配偶者は常に相続人になります(民法890条)。
配偶者は、被相続人に子ども、直系尊属、兄弟姉妹がいたとしても常に相続人となります。
② 被相続人の子ども(第1順位)
被相続人に子どもがいるときは、その子どもは、第1順位の相続人になります。
なお、被相続人の子どもが相続開始前に亡くなっており、かつ被相続人の子どもに子ども(被相続人の孫)がいた場合には、第1順位の子どもに代わって孫が相続人になります。これが代襲相続です。さらに、孫が亡くなっており曾孫がいる場合には、曾孫が相続することになり、これを再代襲相続といいます。
③ 被相続人の直系尊属(第2順位)
被相続人に第1順位の相続人がいないときは、被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)が相続人になります。直系尊属が複数いる場合には、被相続人と親等が近い人が相続人となります。たとえば、被相続人に父母、祖父母がいる場合には、父母のみが相続人になります。
④ 被相続人の兄弟姉妹(第3順位)
被相続人に第1、第2順位の相続人がいないときは、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹の場合にも代襲相続がありますので、被相続人の甥・姪が相続することがあります。しかし、第1順位の子どものときのような再代襲相続は認められていません。 -
(2)内縁の配偶者や再婚相手の連れ子はどうなる?
法定相続人になれるのは、法律婚をしている配偶者のみで、事実婚の配偶者については法定相続人になることはできません。そのため、長年同居をしていて、夫婦と同様の生活をしていたとしても、内縁の配偶者には相続権はありません。
また、法定相続人となる子どもとは、被相続人と血縁関係のある子どもだけでなく、養子縁組によって親子関係を有することになった子どもも含まれます。そのため、再婚相手の連れ子についても、被相続人が養子縁組をしていたような場合には、法定相続人に含まれることになります。
2、相続割合はどのように決まるのか
誰が遺産を相続することができるかを確定したら、次は、相続人全員で誰がどのくらいの割合で相続をするかを決めなければなりません。
相続割合についても、民法がその範囲を規定しています。相続人が誰であるかによって割合が異なってきますので、以下では、相続人ごとに場合分けして説明します。
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(1)相続人が配偶者のみ、子どものみ、親のみ、兄弟姉妹のみのケース
この場合には、各自がすべての遺産を取得することになります。子ども、親、兄弟姉妹が複数いる場合には、その人数で均等に割って遺産を分けることになります。
たとえば、子どもが1人のケースでは、その子どもがすべての遺産を取得し、子どもが3人のケースでは、それぞれ3分の1ずつ遺産を取得することになります。 -
(2)相続人が配偶者と子ども(第1順位)のケース
この場合には、配偶者が2分の1の割合で、子どもが2分の1の割合で遺産を取得します。子どもが複数いるときには、2分の1の割合を子どもの人数で均等に分けた割合となります。
たとえば、このケースで子どもが2人であったときには、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつ遺産を取得することになります。 -
(3)相続人が配偶者と親(第2順位)のケース
この場合には、配偶者が3分の2の割合で、親が3分の1の割合で遺産を取得します。親として父母がともに存命の場合には、3分の1の割合を父母で均等に分けた割合となります。
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(4)相続人が配偶者と兄弟姉妹(第3順位)のケース
この場合には、配偶者が4分の3の割合で、兄弟姉妹が4分の1の割合で遺産を取得します。兄弟姉妹が複数いるときには、4分の1の割合を兄弟姉妹の人数で均等に分けた割合となります。
3、相続割合の例
上記を前提として、被相続人が3000万円の遺産を残して死亡した場合に、具体的に各相続人がどのくらいの遺産を取得することができるかを考えていきたいと思います。
以下では、相続人の組み合わせごとに3つのパターンに分けて説明します。
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(1)相続人が配偶者と子ども3人のケース
このケースでは、配偶者の法定相続分は2分の1、子ども3人の法定相続分はそれぞれ6分の1ずつ(2分の1を3人で分ける)となります。したがって、各人が取得する遺産は、以下のとおりです。
- 配偶者 1500万円
- 子どもA 500万円
- 子どもB 500万円
- 子どもC 500万円
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(2)相続人が子ども3人だけのケース
このケースでは、子ども3人の法定相続分は、それぞれ3分の1ずつとなります。したがって、各人が取得する遺産は、以下のとおりです。
- 子どもA 1000万円
- 子どもB 1000万円
- 子どもC 1000万円
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(3)(2)のケースで子どもがすでに亡くなっており、その子どもに子どもがいるケース
このケースでは、(2)のケースで代襲相続が発生した場合になります。代襲相続をした場合には、死亡した本来の相続人の相続分をそのまま引き継ぎますので、法定相続分は(2)と同じになります。したがって、各人が取得する遺産は、以下のとおりです。
- 子どもA 1000万円
- 子どもB 1000万円
- 子どもCの子ども(孫) 1000万円
4、遺言書で特定の相続人に全額の相続が指定されていたら
これまでは、被相続人が遺言書を残していないことを前提に説明してきましたが、もし被相続人が遺言書で特定の相続人にすべての遺産を相続させる旨の内容を残していたとしたら、そのほかの相続人はどうなってしまうのでしょうか。
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(1)遺留分とは
遺言書によって特定の相続人にすべての遺産を相続させる旨の内容が残されていたとしても、そのほかの相続人には、法律上、最低限度の遺産の取り分として「遺留分」が保障されています。遺言書で遺留分を侵害するような内容が書かれていたとしても、遺留分を侵害することは認められません。
法律上保障されている遺留分の割合としては、以下のとおりです。- ① 父母などの直系尊属のみが相続人である場合……法定相続分×3分の1
- ② ①以外が相続人の場合……法定相続分×2分の1
なお、兄弟姉妹については、遺留分は認められていませんので注意が必要です。
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(2)遺留分の請求方法
被相続人の遺言書の内容に不満である相続人は、すべての遺産を取得した相続人に対し、遺留分侵害額請求を行い、遺留分相当額の遺産を取り戻すことになります。
遺留分侵害額請求権については、相続開始のときから10年または遺留分侵害の事実を知ったときから1年という期間制限がありますので、遺留分侵害の事実を知ったときには早めに行動に移す必要があります。期限内に権利を行使したという証拠を残すためにも、遺留分侵害額請求は、内容証明郵便によって行うようにしましょう。
5、まとめ
今回は、相続における基本的な事項である、法定相続人の範囲や法定相続分割合などについて解説しました。遺産分割においては、まずは相続人の範囲を確定させることが重要な作業となってきます。相続人に漏れがあったときには、一旦成立した遺産分割協議も無効になってしまいますので、漏れがないように進めていかなければなりません。
また、相続にあたっては、相続財産の調査やその評価の問題、特別受益や寄与分といった複雑な問題も絡んできますので、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくのがよいでしょう。ベリーベスト法律事務所では、弁護士だけでなく税理士も所属していますので、遺産分割協議などの法的手続きだけでなく、相続税の申告などの税務面からのサポートも可能です。
相続が発生したときには、ベリーベスト法律事務所 豊中千里中央オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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